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行き止まりの世界に生まれてのmegurosのレビュー・感想・評価

4.2
2018年アカデミー長編ドキュメンタリー賞ノミネート(「フリーソロ」が受賞). キアー、ザック、監督のビン・リュー3人はDVなどの家庭問題から逃れるためスケート場に集い、そこで友情を育んできたが、大人になることでそれぞれ岐路に立ち、その友情にも亀裂が生まれる中、今なお自らを苦しめる過去にも対面していく。1人の監督が一生に1本しか撮りえない自伝ドキュメンタリー映画。

監督自らが常にカメラを友達に向け続けてきたからこそ、過去の美しい瞬間が詰まっている。どんなに苦しいことがあってもスケートボードさえしていれば全てを忘れられるし、救われる。しかしこの映画においてスケボーはあくまでも背景であり、主題として描かれるのは彼らが苦しむトラウマや、現代のアメリカが直面する格差や貧困やシステム化された人種差別の現実だ。

キアーはこの映画の撮影を「無料のセラピー」と評していたが、監督のビンにとっては、家庭環境が似ているビンや自らの母と同じようにDVに苦しみ声を発さないニナ、そしてそのニナに手を振るうザックを撮ることが自らと向き合うセラピーであったのだろう。3人、そしてニナには幸せになって欲しい。愛すること愛されることに慣れ、自分を大切にして生きていって欲しい。映画が終わった後も、彼らが心に残る映画だった。
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