翔海

スウィング・キッズの翔海のレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.3
武器で語るな、踊れ。

1951年朝鮮戦争中、最大規模の巨済捕虜収容所。新しく赴任してきた所長は収容所のイメージメイキングのために戦争捕虜たちのダンスチームを作るよう下士官ジャクソンに命じる。収容所のトラブルメーカーのロ・ギス、4ヶ国語を話せる無認可の通訳士ヤン・パンネ、生き別れた妻を探すために踊るカン・ビョンサム、見た目からは想像できないダンスの実力を持つ栄養失調の踊り手シャオパン、そして4人をまとめる元ブロードウェイのタップダンサー ジャクソン。色々な問題を抱えながらもクリスマス公演に向けて練習に励む。国籍、言葉、イデオロギー、踊る理由、全てが違う彼らはダンスを通じて心を通わせてゆく。戦争の最中にダンスに魅了され、ダンスに熱意を捧げたスウィングキッズのタップダンスがいま始まる。

音が聞こえただけで胸が熱くなる。
戦争の最中、戦うことしか考えては行けない状況下で捕虜たちはジュネーブ条約によって与えられた自由。その自由の尊厳をダンスに熱意を賭けた4人の捕虜たち。踊る理由はそれぞれだけど、想いは皆同じ。ロ・ギスは戦争で英雄の弟として戦う意志を見せなくてはいけない重圧。戦うことよりも踊ることを望むロ・ギスはジャクソンからタップダンスを教わる。密かにタップダンスの練習をするロ・ギスだったが、日常的に聞こえてる来る音がダンスのリズムのように感じてくるようになる。気がつくと彼は踊ることが一番の生きがいだと考えるようになる。

最も苦しい戦争の時代に希望を見出すために彼らは踊り続けた。全てを綺麗事に収めることなんてできない。戦争で失った家族のことや捕虜として捕まっている現状に変わりはない。憎しみによってまた憎しみを生む負の連鎖がある限り人々は分かり合えない。それでもダンスを通じて憎き相手のことを理解しようとした。けれど、相手の身勝手によって大切な人を殺される。この憎しみの負の連鎖を止めるための平和が訪れるのはいつだろうか。生きていればいつかは良いことがあるから、どうか簡単に殺さないでくれ。そうすれば、いつか分かり合える日が訪れるはずだから。その希望の日までどうか生きていてくれ。
翔海

翔海