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スウィング・キッズのdeenityのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.3
新年一発目の映画は韓国映画にハマっていた時にフィル友さんに勧めていただいた本作にしました。

1951年の朝鮮戦争時の話。始めの語りこそ堅苦しい歴史物って雰囲気があるかもしれませんが、そんな最中にタップダンスを披露する5人組のチーム・スウィングキッズを中心としたミュージカルやらスポ根やらコメディやらを色々詰め込んだような作品となっています。
かと言って設定を疎かにはできませんし、歴史的背景を把握している方がスムーズに味わうことはできると思うので、それに越したことはないと思います。また、後半では嫌というほど時代設定による現実を叩きつけられるので、ただ単に娯楽映画とも括れない作品だと思います。

とはいえやはり魅力はタップダンスのシーンであり、演出だけでなくそれにのめり込み、そしてハマっていく個性豊かなメンバーと黒人の指導者というキャラクター構成もとにかく魅力的です。
ある者は生きるための手段として、ある者は恋人や家族のため、戦争により職やら家族やら全てを失っていき、才能や能力があってもそれを活かすことができない現実の中、それでも彼らはタップダンスという人種、性別、言語、思想などの違いなんか関係なく感動させられる音楽やダンスの魅力に惹かれていった。素晴らしいものを素晴らしいと感じる感性にイデオロギーなど関係ない。まさに「ファック、イデオロギー」というダンスタイトル通りの映画だったなと思います。

特に今作での名シーンはクライマックスのダンスは言わずもがななので良しとして、個人的にはギスの頭からタップのリズムが離れなくなっていったシーンは最高だなと思いました。
まな板を叩く音、シーツを張る音、いびきや歯軋り、どれもがそのリズムに聴こえてしまう。若干の急展開などもあってミュージカル的ではありますが、本作のそれは全然気にならない感じでしたね。

あとはどことなく心地よさのある作品だなと思っていたのですが、韓国版の『sunny』の監督でしたか。どうりで温かみのあるシーンが多いましたよ。
ただ、本作みたいな攻めた演出も取り入れて社会的な作品も表現できる辺り、レベルの高い監督だなと感じました。
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