MasaichiYaguchi

スウィング・キッズのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.1
「サニー 永遠の仲間たち」のカン・ヒョンチョル監督の最新作は、巨済島捕虜収容所を舞台に、国籍や人種、言語や文化、そしてイデオロギーを超え、タップダンスを通して絆を結んでいく若者達の姿を躍動感溢れるダンスと、ベニー・グッドマン、ザ・ビートルズ、デビッド・ボウイ等の楽曲で彩どりながら描いていく。
主人公でトラブルメイカーのロ・ギスをK-POPグループ「EXO」のD.O.が演じているのだが、見事なタップダンスと、役柄から北朝鮮の方言まで披露している。
ロ・ギスは収容所所長のある思惑でタップダンスチームを組まされるのだが、ロ・ギス同様にチームの面々も訳ありで一癖も二癖もある。
彼らを指導する元ブロードウェイのタップダンサーの黒人下士官ジャクソンもある事情を抱えている。
このジャクソンをブロードウェイミュージカルの最優秀ダンサーに授与される「アステア賞」受賞のジャレッド・グライムスが演じている。
ジャレッド・グライムスのタップダンスは流石のものだが、D.O.をはじめ他の主要キャストも猛練習した甲斐あって、時にユーモラスだが、キレッキレッのダンスで我々観客を魅了する。
彼らのチームはタイトルの「スウィング・キッズ」と名付けられ、クリスマスに行われるイベントに向けて練習していくのだが…
本作では北と南の朝鮮、共産主義と資本主義、韓国の伝統とアメリカ文化と、対照的な二つが鎬を削っていく。
彼らのタップダンスに対する熱い思いとは裏腹に、水面下では“両陣営”の思惑が渦巻き、それがラスト近くでの怒涛の展開に繋がっていく。
この怒涛の展開の後にあるシークエンスの余韻が、切なさや悲しみを交えて心に波紋を描きます。