回想シーンでご飯3杯いける

スウィング・キッズの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.7
「パラサイト」に続いて、韓国からまた傑作が誕生した。1951年、朝鮮戦争中の韓国に存在した捕虜収容所を舞台に、アメリカの下士官をリーダーとするダンスチームが結成され、北朝鮮軍人の青年を始めとするメンバーと、敵味方を超えて心を通わせていく様子が描かれているのだが、これがもうとんでもなく熱い作品なのだ。

鑑賞前はミュージカル映画的な演出を予想していたが、蓋を開けてみると、かなりガチなダンス映画で、俳優が歌う曲は1曲しかなく、残りはひたすらジャズとタップダンスが繰り広げられる。説明的な台詞は極力控えられ、例えばリンチや喧嘩のシーンでさえダンスで表現される。超一流とは言えないかもしれないが、出演者のダンスに掛ける情熱が画面を通じてヒシヒシと伝わってきて、2時間ずっと画面に釘付けになった。

ダンスチームは、アメリカ人(黒人)のリーダー、北朝鮮の青年に加え、韓国籍の一般女性、朝鮮民間人捕虜の男、更に中国人捕虜の男と、国籍も政治思想も違うメンバーで構成される。当初は言葉によるコミュニケーションがままならない状態だったが、ダンスを通じて信頼関係を築いていく。

監督は「サニー」で知られるカン・ヒョンチョル。本作もユーモアと熱さが同居する何とも人間臭い作風で、ポン・ジュノとはまた違った魅力を感じる。あと、「サニー」同様、英米の音楽や文化から受けた刺激が創作の根底にある人なのだろうと、改めて感じた。本作でもイギリスのミュージシャンによるロック・クラシックが2曲挿入されるのだが、選曲もタイミングも完璧で、鳥肌が立った。

終盤はかなり辛い描写が続く。イデオロギーの狭間で苦しみながら、それでもダンスを止めないメンバー。彼らが鳴らすタップのビートをいつまでも聞いていたくなる。その気持ちこそが、平和への願いなのだ。


※コメント欄にエンドロールに関するネタバレ気味のレビューを書いています。