Zuma

天気の子のZumaのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.1
雨。
現代の人々は、雨というものをマイナスイメージで捉えているかもしれない。例えば、挨拶の言葉にもこうある。「お足もとの悪い中...」
また、低気圧で偏頭痛が、
(無論自分がそうなのだが、)などなどぱっと思いつくものでは、良いイメージではないのかもしれない。

雨。
言わずもがなかもしれないが、古くから人間は雨を求めてきた。「雨乞い」農作物、動物にとって水をもたらす雨は必要不可欠なものだ。

人間は、進化して雨の水をある程度必要としなくとも生活できるようになった。それゆえの結果が、上記の通りだ。


しかし、新海監督作品にはたくさんの雨が登場し、現代に生きる我々の、潜在的なところを燻る。雨を鬱陶しく、煩わしいものから解放してくれる。

彼の作品は、カタルシスを与えられる。その影響か、作品鑑賞後しばらくの間は雨や天気、電線や道路標識など普段気にしていないもの、しかしながら、目の中には入っているもの、がとても強く感じられる。

自分の家族が、「明日は雨か~」と会話されているのを聞いて、ふと笑みがこぼれる。また、天気予報で「梅雨明けと見られます」という言葉を聞いた時、心がもの寂しい感情に苛まれた。🌂



風景描写や、光の加減を描かせたら右に出るものはいないほどの才能を持つ新海監督だが、今作も本当に感動させられた。

全てのシーン、どの部分を切り取っても素晴らしくもう、ため息が出る。圧倒的画力、筆致力は観るものを心の底から魅了した。



正直、初見で帆高くんの生い立ちや今ある状況を読み取るのが難しい。商売が上手いなと。
そんな帆高くんの置かれた状態に対して、周りの大人との関係がとても浮き彫りにされている。

高一の形成期である少年は、そんな社会に対して様々な不満を持ち葛藤し悩む様も丁寧に描かれていて、自分たちに問いかけられている気がした。

ただ、ファンタジーと現実との織り交ぜ方が巧妙でさすが新海監督と言わんばかりだった。映画終盤はがっつりファンタジーだったが、冒頭から中盤のリアルすぎる街並み、細かく看板の社名まで載せることでより現実的になりアニメとは思えない作りになっていた。
晴れ女という迷信的な存在を上手く作品にしているところは着眼点においても演出においてもとても面白く、前衛的であった。


少し時間を開けてもう一度観たい。それがこの作品をもっと深められることだ。
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