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天気の子のsomaddesignのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
5.0
新セカイ系爆誕

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「君の名は」と「秒速5cm〜」くらいしか見た事がない新海弱者。
背景描写の超美麗さだったり、説明を排してキャラクターの心象風景をビジュアルと音楽で伝える作風は好き。
好き嫌いが分かれ、厨二病とも揶揄されがちな、おセンチでポエムな語り口はちょっと苦手。たぶんこれは僕自身が思春期をこじらせたまま大人になったからで、思春期の青臭い自分や痛いこじれ記憶に向き合えてないせい。記憶のカサブタを剥がして塩を塗られる気分で、見るに耐えないんだとおもう。我ながら情けない😫

家出少年と親をなくした少女の出会い。
どちらも孤独で居場所のない少年少女の冒険譚。どことなく「ラピュタ」の系譜にあって、現代的にブラッシュアップした印象。
冒頭の「ライ麦畑〜」のどアップが意味はわかるけど、小っ恥ずかしい😝 家出中のホダカの心象と、この先の物語の暗示なんだろうけど、選書が如何にもすぎて厨二病の誹りもやむなしな気分。


とはいえ青臭くて未成熟な少年が、大多数の言う常識に染まって大人に成長していく……のを拒絶してでも自我を貫く物語。一方の少女が大多数のために自身の運命を受け入れるのと対照的。賛否両論ありそうだけど、自分の思う新海誠の作風そのもだと思った。思春期特有の青臭さ・イカ臭さを恥ずかしげもなくさらけけ出せる正直さを『強え!』と思ってしまった。

まずもって、東京の風景がメチャメチャ綺麗!新海監督は新宿の風景好きねえ。特に大ガード周辺の性も欲も業もゴッチャに見渡せるような風景が好みっぽい。(バニラトラックまで出てきたのは笑ったけど、あの曲聞くとしばらく脳裏に焼きついて映画に戻れないから困る)
見知った風景が超絶美麗なアニメで再現されるだけで凄いし、見たことない風景に変貌してく様も楽しい。
何より天候描写スゲエ! 俺の知ってるアニメの雨って、カッターでセルに傷をつけてランダムに動かす昭和の手法で止まってたから、あんな精緻な雨の描写ができることに驚いた。


フェリーの中でのチキン南蛮定食に始まるフード描写も良かった。
ポテチチャーハンとチキンラーメンスープのくだり、ヒナの自炊スキルの高さも伺えるし、豆苗やネギを育てる節約術で幼い二人の経済状況も見える。親御さんの躾の良さや、長く病気してて家事全般ヒナが請け負ってたのも一発で分かるし、貧しいながらも卵黄を最後にトッピングする豊かさも忘れない(余った卵白はチキンラーメンのスープの具となる)
ささやかな幸せの積み重ねが豊かで、清貧な手作り料理を喜ぶ一方、三幕目ではラブホの冷凍食品を嬉々としてシェアする姿も微笑ましくて愛おしい。フード理論の「仲間は同じ釜の飯を食う の法則」の通り、三人の絆を深めると同時にクライマックスに向けた腹ごしらえにもなってて如何にもジブリ的。(ラピュタだとシータのシチューをみんなで食う感じ)

ホダカの家出の理由とか説明が極力排されてるのはいいけど、雨に濡れるのを喜ぶ一幕目の要素はなんだったんだろう? 後々物語の伏線になってるわけでもないし、そもそも何の設定なんだろか? 浄化されてる感じ?
ホダカの身勝手な行動はさておき、それらが全て無条件に赦されて、なんの犠牲もなくセカイに受け入れられてるのが気になった。なんとも主人公にばかり都合のいいセカイで、甘汁に頭から使ってヌクヌクしたい妄想にも思える。ホントはフェリーから落ちて走馬灯で「理想の東京暮らし&冒険』を見てる説まで思った。


オッサンには「傷だらけの天使」でトマトやコンビーフをかじってた代々木会館(2019年8月で解体とか)がキーポイントになってて嬉しい。なぜか新海誠監督作でよく出る、代々木のNTTドコモビルとの対比も相まって、新しい物に駆逐されていくオッサンの思い出の一端を見たようで切な嬉しい。 一番古い記憶でも既に廃ビル同然のオンボロ具合だったもんなあ。

お金集めにタイアップが沢山必要だったのか、異常にそれらしいシーンが多い。ソフトバンクの白犬や小栗旬とメーカーズマーク、都バスetc… 気づいただけでも10箇所くらいあったけど、そもそもリアリティある描き込みがすごいせいか、あんまり気にならなかった。本田翼こと夏美がHONDAのスーパーカブに乗ってるのは面白かった!HONDAのバイクだ😆

68本目
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