ムッシュ

天気の子のムッシュのネタバレレビュー・内容・結末

天気の子(2019年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

童貞、または童貞のスピリットを持った人に特化して絞り込んだ映画。なので、つまらない、ありきたり、気持ち悪いという声もわかる。刺さらない人には刺さらないが、刺さる人には恐ろしく心をかき乱すキラームービーだ。

帆高くんは前作の滝くんに比べて随分ダサい。行動原理は行き当たりばったり。家出をした理由にも特に深みはない。Yahoo!知恵袋に大事な相談をするような男の子だ。

なぜ恋をしたのかって? そんなの陽菜さんがかわいいからだ。チキンラーメンとか作ってサクッと創作料理なんか出されたらそら童貞は恋するって。かわいいもん。かわいいけど、「どこにでもいそうな」絶妙なキャラ造形。ちょっと料理が上手くて、弟を養いたい責任感もあって、でも生き方の要領はあまり良くない、そんな陽菜さんがとにかくかわいい。そりゃ童貞は恋するでしょ。理由なんかそれでいい。

んで、少年は「世界が永遠に雨でも陽菜さんと生きたい」ってさ、警察から逃げて、線路の上を情けなく歩く(あの歩き方の情けなさは特筆モノ。だがそれが胸を打つ)。人に銃を向け、迷惑をかけ、世界中から青空を奪ったって好きな人を選びたいってさ、最高じゃないですか。

なんとなく家出して、なんとなく恋をした。でもその恋は世界の選択を迫られる恋だったっていう話で。

好きな人のために「できることはあるかい?」と問い詰めてくる映画。エモさに全振りした暴力だ。

バカみたいに泣いたし今でも思い出し泣きする。
ムッシュ

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