シュウ

天気の子のシュウのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.6
2019年140本目

令和版の東京物語

小津安二郎の東京物語は近代化した東京というシステムに老夫婦が爪弾きにされる様を通して、近代化が人間性を奪ってしまうことに警笛を鳴らしていた。

一方で天気の子は、すっかり形骸化してしまった東京というシステムを必死に守ろうとする大人たちから、若い感性を持った子供たちがはじき出されていく。

いよいよその世界がどん詰まり待ったなしになった時、世界はどう動くのか。
それでもなんとか今の世界を維持しようと、若者を人柱にして生き残るのか。
それとも変化を受け入れて、新しい世界の中で生きていく術を見つけるのか

ーーー以下、ネタバレありーーー

水没した後の世界で、未だにシステムに従って繰り返しの行動パターンを続けている大人と、
無邪気に遊ぶ子供の姿の対比が印象的だった。

新海監督が今の若者世代に、社会のために自分を犠牲にして自分の感性を押し込めず、
自分の感性を大事にして、
自分が素晴らしいと思う人生を大事に精一杯生きて欲しいというメッセージを送っているように感じた。

大人は放っておけばよいし、
次の世代の子供たちは、そんなにヤワじゃないよと。

小津安二郎の時代にはこれからより強化されていく東京というシステムに対して警笛を鳴らす形で終わったが、
新海監督は、いよいよ形骸化して壊れてしまうシステムの次の社会を、若者の感性へと託す形で終わった。

しかし、システムの壊し方を水害でやるのは、この監督の感性はすごいなと思う。
シュウ

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