平野レミゼラブル

天気の子の平野レミゼラブルのネタバレレビュー・内容・結末

天気の子(2019年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

僕らの性欲異常者シンカイの贈る反社会的アニメーション。
セカイ系の定義が僕にはイマイチピンと来ないんですけど、少年が世の中の理から徹底的に外れて、やってはいけないことを平然とやりまくるあの感覚はセカイ系というよりアメリカン・ニューシネマ的アウトローと同じ空気を感じる。即ち破滅的かつロックな疾走。性欲と反骨精神が爆裂している。

よってなんだかんだで爽やかかつ、トントン拍子に話が解決していった前作とは結構正反対の作風だ。
まず主人公のスペックに差がありまくる。瀧くんは自身の持てるスペックをフル活用することによって、ティアマト流星の被害捜査であったり、入れ替わりのメカニズムを理解して利用したりと何事も主体的に解決していく。反社会的行動もてっしーの爆破テロくらいなものだろう。
ところが、本作の帆高くんはというと一般高校生スペックとしても結構幼く、何かあればYahoo知恵袋に頼ってググれカスと返される受動的スタイル。しかも何かを解決するどころか次第に悪化させていく有様なため、彼がこの悪循環から脱出するには社会の規範から外れていくほかない。その象徴になるのが「拳銃」だ。アウトローの役割を与えられた帆高に怖いものなど最早何もない。拳銃を使っての「発砲」に始まり「逃走」「未成年のラブホ外泊」「脱獄」「線路逆走」とやりたい放題である。ぶっちゃけ帆高の主張全てに正しいところはなく、梶裕貴ボイスの警察の方が(そのサザエさんみたいなふざけた髪型を除いては)全面的に正しい。

でも、結局のところ我々はこういう「反社会」にこそ惹かれてしまうのだ。というか「そもそも一人の少女を犠牲にして成り立つ社会なんてクソ喰らえ!俺は社会の全てを敵に回してもあの娘を取り戻す!」という主張なんてもう鳥肌モノの格好良さじゃないですか…!大体の感想の枕詞に「前作と比べて賛否両論だと思うけど~」が見受けられる気がするのは模範的社会人としてのポーズだと思う。この前作の大成功で無難な方向に傾かない気骨こそ、性欲異常者シンカイである。もうこれからも好き勝手に性欲を爆裂させてほしい。


まあその上での東京が水底に沈むラストに関しては「加減しろ莫迦!!」と大爆笑したんだけども。好き勝手、やりたい放題すぎである。大好き。
そして故郷が滅んだと思ったら越してきた先も壊滅したてっしー達ほんま可哀想。

このような反社会的行動の限りを尽くした帆高だが、彼が関わった社会の人々は概ね優しい。それは未曽有の東京水没に対して瀧くんのお婆ちゃんが語る「元の状態に戻っただけ」という意見だったり、一連の騒動を実際に見ていたおじさんの「お前如きが世界を変えられるわけないだろ」という擁護だったりする。しかし、根っからの反社会ボーイである帆高はこれらの優しさを振り払い自らの罪を認める。その上で陽菜と再会して物語は完結するのだが、その罪の肯定とボーイ・ミーツ・ガールの結びつきが強固で感心してしまった。大人たちの社会を許せなかった少年が、大人たちの許しすら突っぱねて自ら掴み取った未来。それら全てをRAD WIMPSの「大丈夫」に集約しているのが秀逸。今回、『君の名は。』よりRADの楽曲を使いこなせておらず、ただ垂れ流しただけみたいな場面も多く感じてしまったんだけど、ここと「グランドエスケープ」に関しては完全にマッチしていた。

まあ本作の不満点としては、ラブホの場面でヤッてくれなかったことですね。いや何もスケベな心からじゃないですよ?あそこでお互いの孤独を舐め合い、禁忌を重ねるからこそ味わい深くなったのが原作のエロゲにあった魅力じゃないですか。あ?原作の18禁版あったでしょ?まあ僕が一番好きなのは夏美さんルートですけど。やめろ!俺は正常だ!!幻覚なんかじゃあない!!

超絶オススメ!!

追記:蓋を開けてみれば本田翼の夏美さんの舌ったらずさがイイ感じにゆるくてエロいお姉さん感あって最高でしたね。原作のエロゲでも一番エロかっただけありますよ。じゃあ、ちょっと病院行ってきます。脳の。