Yoshishun

天気の子のYoshishunのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
3.8
これで本当に1900本目!
『ソウルフルワールド』を思い切り公開前のままカウントしてたので訂正、よってやっとこの大台に到達しました!
これからもよろしくお願いいたします。


さて、1900本目に選んだ作品は、昨年年間1位のメガヒットを記録した新海誠作品『天気の子』。前作『君の縄。』、じゃなくて『君の名は。』から実に3年ぶりの監督作品。

離島から都会へて家出してきた少年・帆高。都会に慣れない彼は、どんな荒天も晴天に変えてしまう晴れ女・陽菜と出会う。この能力を使い、晴れを必要とする人々に天気を届ける仕事を始める。しかし、陽菜の体にはとある異変が起きていた。

『君の名は。』が監督作品のなかで最も大衆向け、および娯楽作としての体を成していたのに対し、本作は最も野心的な作品かもしれない。というのも、『君の名は。』のようなストレートな恋愛模様があるわけでも、エンターテイメント性があるわけでもない。あるのは、新海誠版『崖の上のポニョ』ともいうべき、セカイ系と呼ばれる異色性である。

リアリティーなど一切ないような作品を手掛けてきた彼の作品のなかで、最もそのありえなさが目立つ。廃ビル屋上の鳥居、ゴミ箱に捨てられた拳銃、(一瞬ではあるが)原チャリでの水上走行、線路を走ってるのに誰も捕まえようとしない異様な状況など、現実的にみれば突っ込みどころ満載な作品なのである。おまけに、露骨な宣伝広告がチラホラみられ、まさにスポンサーの筋金入りといった感じであふ。さらにはそこにほんのわずかな新海ポエムも含む。これだけでも詰め込みすぎではある。

新海版ポニョと思われる節は、何といっても例のクライマックスである。あちらはジブリ作品なのに小さな子どもの教育上よろしくない場面の多い映画だが、本作は子どもの教育とかその範疇を優に超えている。その根底には、若者の大人への反抗心、そして愛する人への誰にも邪魔されたくない程の想いがある。劇中で帆高が大人に反抗するために使用したのが拳銃であったことにも納得がいく。そして、愛する人への想いの描き方は『君の名は。』とは全く対照的なのが興味深いところ。『君の名は。』においては、街を救い、同時に愛する人を救い出すという一種のヒロイズムが垣間見えたのに対し、本作における帆高の行動は完全に愛する人優先で、多少世界に影響があっても気にしない。そこが本作が賛否両論といわれる大きな所以であり、本作で1番描きたかったことなのかもしれない。

私個人としては、あのクライマックスに対して特に文句はない。むしろあれくらい突き抜けたほうが、映画としてもエンタメ性に長けていて面白いし、気分も高まる。陽菜とのダイナミックな再会の仕方は、究極の映像美と共に最高の演出とともに描かれる。

ただ、あれだけ反抗心や想いを大胆に表現していたのに、ラストシーンの演出は余計に思えた。完全に前作の二番煎じでしかなく、RADWINPSの楽曲も煩く感じた。

このようなセカイ系作品が2019年間1位の大ヒットを記録するのも中々珍しい気もするが、『君の名は。』と比べても監督の描きたかったものが詰まっていたと思う。監督の作家性はまだほんのり出ていたレベルなので、恐らく次回作が新海ブランドの今後を左右することになるかもしれない。

何だかんだ前作の方が面白かった。
Yoshishun

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