のん

2分の1の魔法ののんのレビュー・感想・評価

2分の1の魔法(2020年製作の映画)
4.1
ピクサーの「超」安全運転


スキマスイッチが日本版エンドソングで、魔法の石で身体を取り戻すといえば、すわ『鋼の錬金術師』が始まるかと思いきや、今回は全方位型に振り切ったピクサーアニメーションはさすがのクオリティ。



『トイ・ストーリー4』は、かなり変化球で、賛否両論が極端に分かれた(個人的には大傑作だと思っている)が、『2分の1の魔法』は、そうした批判は出にくそうな、作品のピクサーの傾向からすると、かなり「守りに入ったな」と思わせる作りになっている。


もちろん、面白くないわけではない。作品の世界のルールをワンシーンで見せる冒頭や、王道のアドベンチャーとして、兄弟が難曲を乗り切っていく様は、ピクサーらしい遊び心を交えながらユニークに展開されていく。



今作は特に小道具の使い方が巧みで、兄の車はドラえもんの名作『海底鬼岩城』のバギーちゃんを彷彿とさせる見事な見せ場が用意されていたりする。



とはいえ、便利さに頼り切り、魔法が使えなくなったという設定そのものは、現代人に対する強烈な皮肉になっているはずなのに、物語はそこを軸としていない。

野良と化したユニコーンなど、話が広がりそうな展開をあえてスルーしている点は、親会社のディズニーも含め、ここ数年のトレンドをしっかり抑えた作品作りからすると少し疑問符がつく。


「生きる力を解放する」というテーマをもう少しメインに押し出せば、スキマスイッチの「全力少年」が作品世界ともう少しリンクできたのかなと思う。
のん

のん