チーズマン

HELLO WORLDのチーズマンのレビュー・感想・評価

HELLO WORLD(2019年製作の映画)
3.1
これはべつに似ているとかではなくて間違いなく『君の名は』以降のアニメ映画という感じで、若い人に観てほしいというのは伝わってきました。

コンビニなどの具体的な企業名なども含めて緻密に描かれた実際の日本の都市を舞台にハイスピードな展開のボーイミーツガールの恋愛SF青春アニメ、その場面場面を人気ミュージシャンが自作の曲で盛り上げる。

まさにそういった『君の名は』な要素を、更にもっと加速させたような作品でしたね。
よりテンポを速く、よりハードなSFに、よりミュージャンを増やし、よりアクション要素を強く、よりスケールの大きい話に、より主人公とヒロインが結ばれるハードルを高く。
ここまでやれば面白くなりそうなものですが、どうも薄味な作品になってしまった印象です。

せっかく面白い設定なのに色々もったいないと思いました。


伊藤智彦監督と今回のようなセカイ系との食い合わせがあまり良くなかったように思います。
作品のテーマやゴールを見ても、おそらくセカイ系という物語自体を更新しようと試みてたのかなと思いますし、ある意味達成してるのかもしれません。
しかし、そういうことじゃないんですよね。
なんと言うか、圧倒的に作家性が足りないと思いました。
セカイ系ってすごく作家性が反映されやすいジャンルだと思うんですよ。
それが濃ければ濃いほど、その作品の魅力になるんだと思います。
なので、もちろん出来上がったものは、良し悪し、好き嫌いが分かれますが。
でもそこの反応も込みの濃さが魅力のはずです。

要は、この映画はセカイ系なのに全然ヤバさが足りないってことです。
伊藤智彦という人間が見えてこないんです。
まあこれは個人的な楽しみ方ですが。


べつに伊藤監督に作家性が無いとは思いませんが、今作の場合はセカイ系の構造の方を上手く組み立てて新しい形を作ることに頭を働かせていて、結果とても真面目な作品になってしまっていたと思います。
あえて言えば“ごく普通”のアニメ映画になってました。

同じ監督でも例えばSAOのアニメシリーズや劇場版のような異世界転生っぽい作品、むしろあっちは作家性よりも題材の組み合わせの妙が肝心なので、そこを面白く観ました。
なので今作の物語の設定は面白いと言いましたが、もしかしたらこの設定がまずかったかもしれません。
序盤で明らかになりますがこの映画の舞台はほとんどVRMMOみたいな世界になっていて、まさにSAOのいいとこ取りをしたような設定なんです。
だから異世界転生系とセカイ系という本来似て非なるものがごっちゃになってしまったことが、1番の問題点かもしれません。

自分でもなんでここまでわざわざ考えを巡らしてしまうのか分かりませんか、ヤバいものを観れると期待してたんだと思います。


あと個人的な好みですが、音楽に関してはミュージシャンは1組に統一した方が良かったと思います。


京都の描き込みとは良かったですね。京都駅の大階段が最終バトルの舞台になるのも画になっていて良かったです。

それと俳優が声優を務めてましたが、違和感無くて良かったですね。


伊藤智彦監督のオリジナル作品がもし次があるなら、今度はダークなSFアクションとかすごく見てみたいです。
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