せーじ

HELLO WORLDのせーじのレビュー・感想・評価

HELLO WORLD(2019年製作の映画)
3.6
223本目はTOHOシネマズ日本橋で鑑賞。初日だが、平日のお昼の回なのでパラパラといったところ。
客層も、好事家が中心だった気がする。

「劇場版ソードアート・オンライン」等で知られる伊藤智彦監督が手掛けた、オリジナルアニメーション。2027年の京都を舞台に、内気な男子高校生直実のもとに、未来から"10年後の未来の自分"を名乗る男が現れて…というお話。

基本的には、セルルックなCGアニメーションを基調に「好きな女の子を助けるために頑張る」という王道なSFラブストーリーであり、途中まではベッタベタなラブコメ的な物語がストレートに進んでいく。だが、中盤のある出来事をきっかけに物語が一気に展開し、用意されていたSF要素がドライブをしていくので、どういう事なのかを追うことに完全に没頭してしまい、翻弄されてしまった。
具体的には「仮想世界の構築」や「入れ子構造」がそうなのだろうし、「タイムスリップ的な要素」や、「イマジネーションの具現化」という要素もあったと思う。これまで世に著された様々なSF作品の様々な要素を散りばめつつ、主観となる視点を仮想世界に持っていくことでそのどれとも違う作品になっており、目新しさがある訳ではないが、プロットそのものはよく練られた作品だと感じた。

ただ、それだけに個人的には「掴みの部分」にあたる「主人公とヒロインと好き合うまで」の描写が、かなり薄いうえにキチンと描けていないのが気になってしまった。本作のヒロインは、いわゆる王道路線なヒロインとはちょっと違う、独特な個性を持った女の子なのに、その良さがあまり活かされていない。また、主人公がヒロインのことを何とも思っていない状況から話を始めるというのもスマートではないと感じたし、主人公の告白の場面が唐突だったのも気になってしまった。だが、一番まずいと思ったのは、中盤以降ヒロインも主人公達と同様に色々な目に遭うのに、ずっと受け身なままで、おっとりとしたままそれを受け入れてしまう所だろうか。「ヒロインにこの状況を教えるべきか問題」をきちんと処理せずに完全に放置してしまっているので、ヒロインが人間ではなく単なる主人公たちの駒やマクガフィンの様に見えてしまう。
序盤の展開などで主人公やヒロインに感情移入が出来てないと、後半の展開やラストのツイスト展開に乗れない様な構造になっているので、とても勿体ないなと思ってしまいました。

まあただ、作品そのものの出来はそこそこ良く、作画もかなり頑張っているのではないかなと思います。
興味がある方はぜひ。
せーじ

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