カツマ

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのカツマのレビュー・感想・評価

4.5
あまりにもリアルな夢を見た。それは予知夢?それとも不可思議な現実なのか?そう、ついにマルチバースは全貌を現し、世界に混沌が訪れ、時間軸は崩壊の崖下に沈む。そんな嵐のような狂乱の奥で、一人の魔法使いが見出した心の声とはどんなものか。今、MCUは新たな次元へと突入していく。ここは間違いなくフェーズ4の爆心地、最強にして最恐。MCUは果たしてどこに向かうのか・・!

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の第28作目にして、膨大なフェーズ4のちょうど中間地点に位置する作品である。ドクターストレンジのシリーズとしては二作目にあたり、監督には『死霊のはらわた』や『スパイダーマン』を監督したサム・ライミを充てるなど、その異色な陣容が大いに個性を発揮している。『ワンダ・ヴィジョン』を見ていることは前提で話は進むため、予習は必須。MCUの世界観を一気に拡張した作品になることは間違いなく、後々、一つのターニングポイントと呼ばれることになりそうな予感がする一本である。

〜あらすじ〜

その夜、ドクターストレンジは不思議な夢を見た。その夢の中で彼は見知らぬ少女を守り切れず、更に少女を犠牲にして巨大なパワーを手にしようとするも、彼自身がクリーチャーに殺されてしまう、という謎めいた夢で、その少女は星形の空間に吸い込まれ消えていった。
翌日、夢の残滓を残しながら、アベンジャーズの一員、ドクターストレンジはかつての恋人クリスティーンの結婚式に出席していた。まだ彼女への想いを仄かに残しているのは確かで、表面的な素振りとは異なり、ストレンジの胸中は複雑だった。そんな式の最中、街を巨大なタコの魔物が強襲。魔物はあの夢の中に出てきた少女を追っており、ストレンジはすぐさま少女の救出へと向かった。至高の魔導士ウォンの加勢もあり、無事、魔物を撃退したストレンジ。だが、少女は奇妙な話を口にする。自分はストレンジに見捨てられそうになったこと、それはストレンジが昨晩見た夢が現実だったことを告げていて・・。

〜見どころと感想〜

ついにマルチバースが本格化するドクターストレンジの二作目は、ディズニープラスで配信中の『ワンダ・ヴィジョン』の物語をそのまま引き継いでおり、ドラマシリーズを観なくては映画に付いていけないことを真っ向から示した例となった。他にも『ホワット・イフ?』を見ておくことで繋がる伏線もあったりと、ここに至るまでの道筋を辿ることで面白さが増していく作品となっている。

主演のドクターストレンジ役にはもちろんベネディクト・カンバーバッチ。『スパイダーマン・ノー・ウェイ・ホーム』ですでに登場シーンが多かった彼だが、ここに来ていよいよマルチバースを紐解く大きな役割を担うことになる。他にもレイチェル・マクアダムスが久々に再登場し、再びクリスティーンを演じてくれているのも嬉しい。お馴染みのキャラクターの役としてベネディクト・ウォン、エリザベス・オルセン、キウェテル・イジョフォーらも参戦。新キャラでは今後のMCUのキーパーソンとなりそうなアメリカ・チャベスを新人のソーチー・ゴメスが演じている。

監督がサム・ライミということもあり、『スパイダーマン』と比べても断然ホラー色が強く、監督の灰汁の強さがもろに発揮された作風となっている。そのため、古きホラー映画のごとくカットや音楽がMCUワールドと融合、過去のMCU作品と比べても突き抜けて個性的であり、ホラー映画のタッチをヒーロー映画に投影するという離れ技を見事に成し遂げてみせた。
マルチバースという複雑怪奇な脚本にも関わらず整合性を保った脚本も秀逸。MCUという看板の強固さと信頼性を今まで以上に確信させ、それでいて新たな展開に胸を躍らせたくなるような作品だった。

〜あとがき〜

予告編の時から何かとネタバレ禁止が叫ばれてきたドクターストレンジの続編がついに公開!ネタバレを避けるために物語の核心には触れていませんが、とにかくぶっ飛んだ構成とハイクオリティなエンタメ性が融合した凄まじい一本が炸裂しています。

ホラーのタッチは強いですが、ホラー映画よりは怖くないので、ホラーを見慣れている人ならば怖くないかも。逆にホラー映画を普段観ない人には少し苦手なシーンもあるかもしれないですね。

また、予習としては『ワンダ・ヴィジョン』が絶対に必須です。自分も事前にディズニープラスで観ておいて良かったと心から思いましたし、観ておかないと訳がわからないシーンがいくつか出てくると思います。
新キャラも登場していよいよ拡張するMCUワールドはどこへ向かうのか?6月のドラマシリーズ『Ms.Marvel』、そして7月の映画『ソー・ラブ・アンド・サンダー』での新たな展開を楽しみに待ちたいと思っています。
カツマ

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