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ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネスのshxtpieのレビュー・感想・評価

3.0
めちゃくちゃいい(スコアは 3.5 だけれど)! よすぎて、映画を見ながら友だちと「ここがいい!」としゃべりたいくらいというか、まさにそういう「なにかを言いたくなる」ような、工夫とイースターエッグに満ちた、現在のマーケティングのありかたに則った作品だった。

正直に言って、公開直後に見た『ドクター・ストレンジ』の話しは、すっかり忘れてしまっていた(だって、もう 6 年前だよ!?)。しかも、 TV シリーズが重要になったフェーズ 4 からはけっこう MCU 離れしていて、『エターナルズ』も映画館で見逃した(この『 MoM 』もそうだけれど、ディズニープラスの戦略なのか、あきらかに上映期間が短くてひどい)。『アントマン・アンド・ザ・ワスプ』のように劇場で見逃してはなるまい、と奮起して、『ワンダヴィジョン』をちゃんと予習して、映画館へ。『ワンダヴィジョン』を見てなかったら、さっぱり意味がわからなかっただろうな。

『 MoM 』は、前評判どおり、めちゃくちゃサム・ライミだった。グロも、ホラーのエレメントも、「なにこれ!?」と引くような不可解さや馬鹿馬鹿しさも。良くも悪くも、『スパイダーマン』トリロジーにも通じるオールドスクールで堅実な映画づくりで(特にシネマトグラファーと編集の仕事が)、サム・ライミってこういう映画作家だったなって思い出した。『シン・ウルトラマン』という劇毒を食らったあとだったからこそ、映画としての手堅さに安心しきって、身を委ねられたところもある(サム・ライミの映画にそんなことを感じるなんて!)。そして、「これぞ」なダニー・エルフマンの音楽! コーチェラのあのライブを見たあとだったから、けっこう興奮した。

語るべきポイントがほんとうにたくさんありすぎるけれど、ドクター・ストレンジってめちゃくちゃ強いのに、いつもボロボロだな〜、失敗しすぎだな〜と思った。特に『 MoM 』ではずっと押され気味で、ヴィランにぶっとばされたり、敗走したり、しまいには XX になってしまう。情けないやら、頼りないやら。っていうか、アース 616 のひとたち、他のユニバースに迷惑をかけすぎ。このひとたち、メタバースに関わっちゃダメでしょ!

それに対して、最凶の存在に堕してしまったスカーレット・ウィッチ/ワンダ・マキシモフは容赦がなくて、強すぎる。ともあれ、『ワンダヴィジョン』と『 MoM 』におけるワンダは、あまりにもかわいそうだ。これで彼女の出番が終わりだったら、あまりにも報われない。そういうわけで、ワンダをどうにか救済してあげてほしい。『ブラック・ウィドウ』だって、ナターシャを救ったとは言えないし……(適切に弔われたり、送り出されたりする男性のキャラクターたちに対して、無惨な扱いをされるのが女性ばかりだというのも、どうなんだろう)。

MCU のことを知らなくてももちろん楽しい映画だとは思うけれど、一方でもう 28 作目(!)ということもあって、あまりにもハイコンテクストすぎるとも思った(『スパイダーマン NHW 』も同様)。また、プロットについても、スーパーヒーローの危険性についての自己言及的で自閉的なものが多すぎる。だからこそ、『シャン・チー』のようにすっきりとした新しいスーパーヒーローの物語をもっと見たいと思った。あと、ソーチー・ゴメスがよかった。

最近、なぜだか減ってきているように感じる 3D 映画。ひとびとは、 3D にもう飽きてしまったのだろうか。『 MoM 』でも「うわっ! これはすごい! 3D だ!」ってなったのも、冒頭だけだった気がする。
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