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火口のふたりのpenguinwhipperのレビュー・感想・評価

火口のふたり(2019年製作の映画)
5.0
『火口のふたり』完成披露試写会にて鑑賞。
男の狡さと怠さと女の狡さをてんこ盛りにして「身体の言い分」の元、文字通り裸で向き合うふたりっきりの五日間。女の心に刺さるものがあった。多分男の気持ちにも刺さるものがあると思う。オトナのおとぎ話かもしれないけどこんな話好きだ。
(人によって好き嫌いが分かれる映画かもしれない)

劇中の食事をするシーンやお酒を飲むシーンがとてもナチュラルで美味しそうだった。
映画の半分ぐらいはずっとひたすらヤリまくる。
色っぽさは皆無でまさに肉欲貪るカンジ。
エロいけど、ダサい。でもリアル。
(まー、リアルなセックスなんて半分以上はそんなもんだ、たまにきれいなのもあるけど大概は側から見たら滑稽な動きしてたりするもん、どんな人のでも)
男女の絡みのシーンだけに演じる側も大変だったのではないかと思うんだけど、それでもいい意味で特別なことはなく、日常を生きてる人達の絡みのシーンなのと男女の普通の会話だったのが良いなって思った。主演のふたりがそれぞれの役を過剰に作り過ぎることなく、尚且つリアリティを持たせて演じているのがとても良かった。(といっても、この映画はこの二人しか出演してないんだけど)
低い抑揚の中で淡々と日常と男女の生と性を描いた映画。そして、海沿いの湿度と匂いを感じるような映画だった。
『この世の最後の時、あなたは誰の横で何をしていたいですか?』と聞かれてる感じ。
富士山の火口は、まるで溢れ出そうになるふたりの思いが噴火間近の火口みたいで、
その隠喩でもあるなと思った。
だから「火口のふたり」

《試写会後の舞台挨拶の感想》
完成披露試写会の後、荒井監督と主演の柄本佑さんと瀧内公美さんの舞台挨拶があって、
柄本さんの「直子を机の上に乗せて賢治が腰を振るシーンがあって、どこで果てるかを荒井監督が手で合図するっていうのがあったんですけど、その時俺"この人俺のこと5歳から知ってるんだよな"って思いました」っていうコメントがおかしかった。一生懸命な柄本佑と瀧内公美のふたりのバディ感よ。
観覧者から2名質問を受け付けるとの事で、男性一人からの質問の後は誰も手を挙げなかったので、質問してしまった。
私からの質問は要約すると
「直子と一体化するような瞬間はありましたか?」それに対して丁寧に答えてくれた瀧内公美さん柄本佑さんありがとうございました。
瀧内さんは「最後のシーンで直子が言う「けんちゃんが好きだから」の台詞の時に泣くつもりはなかったけど自然に涙が出た。監督からも泣くなよと言われていたのに泣いてしまったとの事。その時に直子と一体化したような気がする。」との答え。その言葉が聞けただけでもこの映画を観て良かったと思った。
質問したら8/10発売のフォトブックをもらった。

試写会が終わって帰ろうとしてたら、主演の柄本佑さんがロビーに出てきたところだったので、お声がけしたらフォトブックにサインしてくれた。映画の感想を一言二言お伝えした。ミーハー心を出して握手もしてもらった。うれしい。
自分の中で、2019年度に入ってから今まで観た邦画の中ではトップ。

《個人的ツボだったところ》
・アクアパッツァ美味しそう。
・パスタや麺を食べてるシーン多い。
・主演二人の演技がとても自然なのと、男と女のズルさと業がちゃんとそこにあったと感じた。
・富士山🌋??そうきたか。
・お父さんかなと思ったらやっぱり柄本明さんだった。
・アクアパッツァやっぱり美味しそう。
・食べて寝て生と性のある日常。
・耽美ではなく、退廃的にダメになってる日常の男女のズルさが描かれているところ。

あと、野村佐紀子さんの写真がとてもとても良い。
二人の距離感がきちんと写っているのと、とても自然にふたりの表情を引き出してる。
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