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火口のふたりのsotaのネタバレレビュー・内容・結末

火口のふたり(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

画的に面白いカットがいくつかあった。
ラストの海辺での引きとか、ポスターが巻き戻るとことか。
ソファーを叩く瀧内公美の表情すごかった。
いろんな状況はわかってるけどその瞬間の欲求と感情の複雑な交錯がなんだかよくわかる気がした。

でも開始直後のスタッフロールの見せ方と音楽だったり、会話の文字量が多かったりで挫けそうになった。音楽もバイオリンが全然マッチしてないように思えた。

内容に関する感想は3つ。
①セックスの描写よりもその前後がおもしろい。
賢治がひとりよがりに犯すようなシーンの後とか。
基本的に人間はどうしようもなく愚かなんだと思う。直子にしたって賢治にしたって、倫理的にこうすべきとかという価値判断よりも目の前の快楽、直子が言うところの”自分の身体の言い分”に浸ることを選択する。でもそれは本当に悪いこと、恥じるべきことなのか。2人の男女が自分たちの欲望を殺して目に見えない道徳心に迎合するのが本当に善なのか。

②男女の結婚に対する考え方やその相容れなさもひとつのテーマかと。
本編のセリフにはカットされているが、年齢や子宮筋腫を理由に結婚を決めた直子に対して賢治が言った言葉。
「オレは子宮が出しゃばるような結婚はイヤ」。
凄まじい表現でカットされるのもわかるが、このニュアンスは本編でも充分表現されている。
そしてこれこそが男女の決して分かち得ない価値観の一つなのでは。

③2人の関係と地震や火山の描写。
推測にすぎないけど、セックスにおける今の瞬間を生きることと天災などの未来の不確定性の対比なのだと感じた。それは天災に限らず、政治や経済で未来に希望なんか持てない状況の日本で、今に溺れて生きるしかないという悲観的な表現とも取れるし、と同時に自分(と愛する人)以外のことは”他人事”であり、自分という範疇を超えたこと、つまりどうしようもないことなど考えずに2人の世界に閉じこもって生きても良いという表現にも思えた。

たしかに描かれてるのは人間の”欲”だけど、決して否定されるべきものではないし、繰り返されるセックスシーンだけがこの映画の見所ではない。また野村佐紀子のモノクロームの写真がこの作品の世界観にしっかりハマってる。