らくだ

AI崩壊のらくだのレビュー・感想・評価

AI崩壊(2020年製作の映画)
3.5
近未来日本において医療や社会構造にもはや支配しているといっても過言ではないほどに普及したAI「ノゾミ」が突如として暴走し、社会に大きな混乱が起こる。その容疑者としてノゾミの開発者である桐生は警察に追われながら、AI捜査の目をかいくぐり真犯人を探っていく…という近未来クライムSF作品です。

濡れ衣を着せられた主人公が逃亡を図りながら真犯人の情報をつかんでいく、というのはこの手のクライムモノでは王道な展開なので、そういう意味ではこのジャンルでは「スタンダードな物語の素材を世界観でどう味付けしていくか」が大事ではあると思うんですけど、その辺は割とあっさりしてたかなぁと思います。よく言えば観やすい作品です。
この映画のSFの描写に「日本の社会に突然高度なAIが導入されることによる社会デジタルアップデートの限界」みたいな制作側のスタンスをギンギンと感じられてとても好きですね…
とはいえ、日本の静かでミニマムな技術革新の経緯を考えると、近未来日本SFで従来の社会に溶け込むような、生々しく見える味付けの方向性というのはこんな感じなのかもしれません。電子マネーが使えなくなる所なんかは今すぐにでも起こりそうなのがちょっと怖いですね。


あと、AI開発者の夫妻が自分の娘に「こころ」という名前を付けるのは、ふたりが持つ人間とAIに対する姿勢が少し見えて、そういう直接は触れられない所はすごく好きです。
らくだ

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