まるちよ

ザ・マミーのまるちよのレビュー・感想・評価

ザ・マミー(2017年製作の映画)
2.5
「史上最も怖いママがやってくる」とかいうコピーと、ジャケットに騙されたけど、この映画はホラーのようでホラーでは無い。
スラムドッグミリオネアとか天使の住む街みたいな、親もいない貧しい子供が、メキシコの過酷な環境で必死に生きている様子を伝えるドキュメンタリーに近い感覚を受ける。
そこに若干強引にオカルト要素を足したような映画。
そして、トラのぬいぐるみがなぜかひたすらかわいい映画でもある。
ていうか、原題の「虎は恐れない」の方が絶対良いと思うのに、なんでこんなアホみたいな邦題付けたのが疑問。

主人公は、唯一の母親をギャングに突然殺された女の子(パオラ・ララ)。
これが本当に突然で、どんだけ治安悪いんだと衝撃を受ける。
そして何故か怨霊のように突如娘を驚かすようになるお母さんがかなりおっかない。
いきなり手を掴まれたり、地面を走る黒い血のような演出など、あの手この手でなぜか自分の娘を驚かせる。
お母さん含め、被害者はみんな死体袋に入れられてるんだろうな、という出で立ちなんだけど、自分の娘なんだからもうちょい穏やかにできないのか。

突然肉親が居なくなってしまった女の子が頼るのは、家の近所で路上生活をしてる少年グループ。
このグループのリーダーであるシャイネがすごいかっこいい。
ぬいぐるみを抱えているような幼い男の子から、生意気な子供まで、みんなを束ねてて常に親を焼き殺された際に使われたライターを持ってる。
小さい子供なのに、眼光鋭く演技も素晴らしかった。

お母さんの幽霊はとりあえず置いといて、切ない話の中にファンタジー要素が入っているのは過酷な人生への逃避描写なんじゃないかと感じた。
特にラストシーンのくだりは腐りきった世の中なんてそうそう変わらないとはわかっちゃいるけど、少しだけ希望を感じられるようになっていて、それが余計に切なくて良かった。

死者の祭りがあるメキシコならではの死生観があるからこその映画。
地味におすすめ。

◆良いところ
- とにかくトラのぬいぐるみがかわいい
- 恐怖描写は意外と怖くできてる
- シャイネがかっこよすぎる
- 切ない

◆悪いところ
- ホラーなのか、ドラマなのか中途半端
- トラに纏わる話の軸が伝わりづらい
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