幽斎

アンノウン・ボディーズの幽斎のレビュー・感想・評価

アンノウン・ボディーズ(2017年製作の映画)
4.0
ベルギーの人気作家シリーズ第3弾。ベルギーのミステリーと言えば「メグレ警視」のGeorges Simenon「名探偵コナン」の元ネタとして知られる。そして私が4.6評価した「ロフト.」オランダ「LOFT 完全なる嘘」ハリウッド「パーフェクト・ルーム」と何度もリメイクされた。お薦めの密室スリラー、未見の方はオリジナルから(御夫婦での鑑賞は厳禁(笑)。

第1弾は2003年「DE ZAAK ALZHEIMER」日本公開時「アルツハイマー・ケース」全く無名でしたがDVDのタイトルは「ザ・ヒットマン」←観た事有る!と言う方も多いでしょう。第2弾「HITMAN X.復讐の掟」はクライムアクション、そして本作と続く。原作はJef Geeraerts、2015年に他界されエンドロールで追悼されてる。ベルギーの渡辺謙ことKoen De Bouw(ロフト.にも出演)とWerner De Smedtは其々フィンケとフレディをシリーズを通して演じてる。「アンノウン・ボディーズ」の原作は1990年出版「Double face」日本で翻訳されて無いので原作は珍しく未読。

本作の評価は芳しくない。ヨーロピアン・ミステリーの「ミレニアム」「特捜部Q」と同じ様に過去シリーズのお約束を前提に作られたので「ザ・ヒットマン」の第3弾とは露程も思わない。「アンノウン・ボディーズ」の邦題も北欧ミステリー・ブームに肖りたい気満々で、英語圏のマーケットを意識した演出と、ベルギーらしいスタイリッシュな映像とエロ。ベルギーの名所が随所に出るサービスカットも有る。国境を越えた捜査の難しさを地続きのヨーロッパで感じる演出は、本作らしい味わい。

Jan Verheyen監督はスリラーに佳作が多い(裁判の行方は超傑作!)サイコ路線を貫けば「特捜部Q」的な面白さは出せた筈。監督の秀逸さはオープニングで発揮され、尻すぼみに終わった。プロデューサーがハリウッドを意識して説得力に欠けるアクションを付け加えた事が仇、監督の個性を打ち消した悪しき見本。国際マーケットを意識して原作と異なるニュアンスの作品として、レビュー済4.0評価「エリカ&パトリック事件簿 踊る骸」が有る、理由は次項。

ミステリーには2つのタイプが有る。1つは「フーダニット」Who done it = 犯人は誰か?、お薦めは綾辻行人「十角館の殺人」一生に一度は読まないと後悔する驚愕のラストは必見。2つ目は「ホワイダニット」Why done it = 犯行の理由。お薦めは東野圭吾「悪意」氏の最高傑作と言って良い。
実はヨーロッパ大陸のミステリーは日英米の様にホワイダニットを解説しない作品が多いので注意が必要。理由はロジック主義では無く、人間模様=センシビリティーに重きを置く為、心理トリックが多く映像化の際に誤解を生むケースが多い。これは映画も同じです、参考までに。

原作が未読だが雰囲気スリラーとして、そんなに悪い作品とは思わない。
幽斎

幽斎