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フォー・ハンズのhorahukiのレビュー・感想・評価

フォー・ハンズ(2017年製作の映画)
3.7
ジジイの股間に覆いかぶさる謎の雲

幼い頃に両親を殺した強盗が出所した!
復讐に燃える姉と平穏に暮らしたい妹(主人公)だったけど、不慮の事故で死んだ姉が自分に乗り移って復讐しようとするから大変だ!ってなるサイコスリラー。

未体験ゾーン2019公開作です。
今年の中盤〜後半にかけて公開された未体験ゾーン作品は全然見に行けなかったので、早い時期のレンタルありがたいです!『ゼット・ブル』はまだかな?

夕暮れの綺麗な風景→ピアノを一緒に(4本の手で)弾く幼い姉妹と綺麗なピアノの音色という美しい始まりを見せたかと思ったら、それを搔き消すように突然聞こえる悲鳴と暴力と殺傷の音。直接的な描写を控えめに、あくまで幼い姉妹の目線で「敵意を象徴する音」からお互いを守ろうとする姉妹に胸が苦しくなって一気に引き込まれた。

強盗犯のことは忘れて自分の人生を歩もうとする主人公と、強盗犯が同じ街にいてはいつか自分たちの身に危険が降りかかると考え、強盗犯を街から追い出そうと考える姉。

両者とも未来を見据えた行動だし、平穏を求めているのも同じ。ただ、危険に蓋をし見て見ぬ振りをするか、危険の根元を断つかの違い。どちらが正しいのかはわからないけど、妹を守ろうとするがあまり愛情が束縛へと変わりその愛情が強いほどにより強固になる妹への枷は妹にとってはたまったもんじゃないし、姉の気持ちもわからんでもないしで、何か辛くなった。どっちにしてもやり過ぎな姉の行動は共感できないとこが多かったけどね。

心の大元にあるものは共通しているとはいえ、ある意味では対極に位置する2人の感情は、ひとりの人間の内面の多面性の現れなわけだし、幼い頃に目の前で強盗に両親を殺害されるという大事件がわかりやすいひとつの感情だけを生み出すはずもなく、その表裏一体で複雑で行き場のない感情をわかりやすく人格として表現し、その心的葛藤を物理的に可視化したこととか、心と心のやり取りを電話で行なうというのは面白いと思いました。

クライマックスの「いるの?」の破壊力とか、ファーストカットと曲まで全く同じラストカットで締めくくることによる余韻が良かったです。そして、素っ裸で女を追いかけて走り回るジジイの股間に常時漂ってる謎の雲の存在感が凄すぎて、今となってはそれしか覚えてません(笑)
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