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クーリエ:最高機密の運び屋のMasterYuのレビュー・感想・評価

4.0
1960年代初頭、米ソの核武装化が激しくなる中、CIAとMI6はソ連の情報提供者との接触に、イギリス人セールスマンのグレヴィル・ウィンを利用しようとする。
一触即発の状況下、危険な任務であることを察したウィンは、当然拒否するが、情報提供者のペンコフスキーに説得されて、モスクワとの往復を引き受けることに。その結果、ウィンを待ち受ける運命は・・・。

全体を通してバランスが良く、スポットを当てる部分と省く部分の取捨選択も上手い。
ウィンとソ連の情報提供者ペンコフスキーの築き上げられていく友情も、観ている側がスッと受け入れられる構成で、故にウィンの決断や、ウィンとペンコフスキーの最後の邂逅も、グッと胸にくる。

「クーリエ」というのは、外交官が外交文書を本国と各国の大使館の間で運搬する業務を意味しているそうですが、考えてみればソ連に疑われにくいという理由だけで、東欧に工業製品を卸す一般人セールスマンにこんなことをやらせちゃうというのも凄い話だし、これが実際にあった話だというのだから、ただただ驚くばかり。

ベネディクト・カンバーバッチの演技、雰囲気作りはもちろん素晴らしく、これはエンドロール前の本人映像を観ればより納得できます。
ペンコフスキー役のメラーブ・ニニッゼとカンバーバッチとのバランス。このキャスティングは作品の質を間違いなく上げているように思われます。
「ジュディ 虹の彼方に」、「ワイルド・ローズ」(共に2020年劇場にて鑑賞)のジェシー・バックリーがウィンの妻役で出演していますが、彼女も流石の味を出していましたね。
宣伝にあるようなスパイ映画というよりは、ヒューマンドラマとしての色が強い秀作だと思います。
最後まで堪能しました。
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