ぼのご

王国(あるいはその家について)のぼのごのレビュー・感想・評価

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64分版を鑑賞。冒頭、幼馴染の子どもを殺した女性による供述書の読み上げ。ここだけだとちょっとドキュメンタリーみたいで「アングスト/不安」的な印象を受ける。
個人的にはこの時点でかなり楽しめていたら、その後は供述書の内容に沿って時間が遡り、幼馴染との対話の撮り方が新鮮。台本を読み上げている風景が劇中劇なのか、劇中劇の形式をとった心象風景みたいなものなのか。

更にリハーサルとしての台詞読み、演技として感情を乗せた台詞読みと同じ場面が少し形を変えて映し出されていく。
これは、人によって同じ事柄でも捉え方がこんなにも違うということを場面の反復によって表しているのかと思っていたら、役者のメタモルフォーゼの過程を撮ってみたらしい。リハーサルの場面は元々使う予定はなかったとのことで、上映後の草野監督のトークを聴いていると、物語性よりも役者とか生身の人間の影響を受けながら撮影していることに少し葛藤があるみたいだった。

フィクションを撮っていく上でもっと物語性にも目をやって、今の撮り方と折り合いをつけないといけないのかなって言ってたけど……そんなの全然気にしなくていいのにな〜!
物語の筋がはっきりした映画を撮りたいって思った時にそう撮ればいいだけで、このまま好きなように撮り続けてほしいなぁ。

この作品を観ていて、無邪気なエネルギーに溢れていた子どもの頃と、大きくなってからの人間関係の窒息しそうな窮屈さを感じた。大人って子どもより制約無い筈なのになんでこうなるんだろー。150分版もぜひ観たいな。
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