都部

王国(あるいはその家について)の都部のレビュー・感想・評価

3.3
私達の王国を思い出して。

劇中劇の再繰による俳優の役柄の生成と獲得を主軸に置いた本編は奇妙な筋書きで、言葉が領土を持って王国という共同幻想という形で結実するという観念的な着地点自体はかなり好ましく思える。リハーサルと称して5分程度のシーンを2.3度繰り返す事で、虚構の役柄が現実味を帯びていく過程は手に取るように分かるし、そこにこそ二人だけの独立した他者には理解できない世界の説得力があるのだと。途方もなく真摯な描き方だ。面白いと言うには気が引けるが王国というモチーフもそうなってくると的確で、それはまるで誰かを演じて世界を成立させる俳優その物の存在の象徴のようですらある。色濃い作家性と出逢うと心は踊るもので、監督の『螺旋銀河』も願わくば近日に目にしたいものである。
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