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王国(あるいはその家について)のshxtpieのレビュー・感想・評価

4.0
ガーディアン紙によれば、「コロナウイルスの時代における初めての映画」。たしかに、そうかもしれない。「ウイルス」が壊す関係性、ひととひととの距離(ソーシャルディスダンシング)、安全な空間(家、イエ)を保つということ。

『王国(あるいはその家について)』はとてもエクスペリメンタルな映画で、挑戦的、あるいは、挑発的である。演じること、物語ること、演じることを撮ることについてのメタな映画であり、だからこそ何重にも入れ子状になった、ほんとうに不思議な映画だ。これはなんなのだろう、わたしは今、なにを見ているのだろうと、何度も疑問に思った。そして、このひとたちはなにを演じているのだろう、とも。

どこに向かっているのかわからない編集、きわめて感覚的で奇妙なカメラワーク、「脚本」(それじたいも、ものすごい)という存在を介して行きつ戻りつして、終点の見えない物語……。さまざまなベクトルで同時に進行していく、演劇のような、映画のような、えたいのしれないなにか。どろどろとした、半液体状の、奇妙でうつくしい、なまなましい生の感覚が、『王国』には横溢している。これはいったい、なんなのだろう?

正直にいって、以前『螺旋銀河』を見たときは、ひどく落胆した。腹が立つほどだった。しかし、わたしはこの『王国』における実験と挑戦を買いたいと思う。なににも似ない、不思議なフィルムがもっている底知れない可能性を。
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