茶一郎

ブラック・ミラー: バンダースナッチの茶一郎のレビュー・感想・評価

3.8
 観客が主人公の行動を選択して物語を進める「インタラクティブ映画」がNetflixから誕生。
 同様に、観客がアプリを操作して物語を進める映画『Late Shift』なるものがあると聞いた時は驚きましたが、応援上映、4DXを筆頭に『グレイテスト・ショーマン』や『ボヘミアン・ラプソディ』など「体感」が前提の音楽映画が大ヒットをしている映画界隈に、1スクリーンを1人が占有・見ている事が前提のNetflixが持ち込んだ「体感」映画は、本作『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』でした。

 本作『バンダースナッチ』が単純な「体感」映画に収まらなかったのは、この物語自体が「選択」についてのものであったからだと思います。
 本作の主人公は、ゲームブックを基にしたテレビゲームを作ろうとする青年(『ダンケルク』のトミー)。この設定だけでも、プレイヤーに「選択」を要求するゲームブックとテレビゲームという二つのアイテムが登場しますが、彼が尊敬するカリスマゲームメイカー(今、映画界で最も不愉快な顔面を持っている『デトロイト』のウィル・ポールターが好演)が主人公に「選択」、「P&C 」・プログラム&コントロールの説明をする辺りから、いよいよ本作の二重構造が見えてきます。

 まさに本作『バンダースナッチ』は、ディズニー・アニメの近作『シュガー・ラッシュ:オンライン』の登場人物が自身がゲームのプログラミングの中でしか行動できない事を嘆いたように、またドラマ『グッド・プレイス』、『ウエストワールド』さながら「自由意志」の存在について疑問を呈しました。
 我々、観客が登場人物の行動を「選択」している事に気付いているかのように自由意志を疑い始める登場人物、そして我々、観客も物語内に入り込む事になります。この多重構造が見事!本作を選択型のインタラクティブなエンタメにする事の意義を、物語と設定側からも固めている見事さです。

 90分の上映時間と聞きいざやってみたら、これが話の隅から隅まで味わいたくなるほど作り込まれており、結局4時間ほど選択肢をこねくり回す始末で、私は4つのエンディング(エンドロール?)のみ確認する事ができました。もちろん空手チョップと股間蹴り、どちらも観ましたよ。

 音声はこちら https://youtu.be/MvuTggR0gPA
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