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セメントの記憶のレクのレビュー・感想・評価

セメントの記憶(2017年製作の映画)
4.0
地中海を眺望する超高層ビルの建設現場で働くシリア人移民、難民労働者たち。

"セメントの味は僕の心を蝕んだ"

ハンマーの叩く音と打ち寄せる波の音、地中海とセメント、建設現場と戦場を比喩的に見せ、悲しみの記憶を情緒的に織り出す映像詩、"映像"をひとつの"言葉"として語られる度肝を抜かれるドキュメンタリー作品。


見たことも触れることもなかった海に思いを馳せ、想像の中で"潜った"少年が、現実に待ち受けていたのはセメントに"埋もれた"こと。
そして戦争という破壊行為の犠牲者が皮肉にもその海を見渡せる超高層ビルの建設、つまり街の再建をさせられる。

‪過去の記憶と共に埋もれたセメントが、その記憶をなかったかのように塗り固められていく。‬
‪この突き詰められた対比や繰り返される連鎖、比喩描写とそこに込められた世界で働く移民たちへの祈り。‬

正直なところ、率直な感想としてはドキュメンタリーというよりも思想で見る芸術作品に近い。
それ故に、劇伴や台詞は最小限で良い。
また、監督自身も祖国を亡命した元シリア兵であり、戦争の悲惨さを体験している。
だからこそ、これらの画に込められた監督の想いが強く反映されているんだと思います。
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