アメリカ・ネバダ州の刑務所が舞台、
フランス出身の女性監督によるフランスとベルギー合作長編デビュー作品。
受刑者による野生化したマスタングを飼育、調教する事を通し、
自身の人格をコントロールしていく心理的リハビリのプログラムに参加する一人の孤独な男の日々を描いている。
先ず、受刑者と馬のジャケ写に惹かれた。
囚人更生の一環として、現在もマスタングの調教プログラムをネバダ・アリゾナ・カリフォルニアの3州で行われている事を初めて知った。
そして、マティアスが主役、ただそれだけで迷う事なく鑑賞。
ローマンは衝動的に罪を犯した、
妻に瀕死の重傷を負わせ刑務所で12年、
罪悪感や、残してきた娘と向き合う事が出来ずに心を閉したままの男、
そんなローマン(マティアス・スナールツ) が、一頭の暴れ馬を調教していくプロセスの中で自身の心も少しずつ安定し、馬と心を通わせていく時間を丁寧に描いている。
寡黙で暴力的な鋭い瞳のローマン、
しかし馬と関わる時間と共に、表情は柔らかく優しい眼差しに変わっていく、
実際に初めて役柄の馬と心を通わす事が出来た瞬間が作品の中にあるそうです。
とても素敵なシーンです(おそらくあのシーン)
ラストに向けストーリーは意外な展開に進んで行きます。
テーマはとても荒々しいが、作品全体は静かで穏やか、
多くを語らず思いを巡らせながら観て行く作品です。
マティアスが寡黙で心根は優しい素敵な男ローマンを、
牧場主のマイルズをブルース・ダーンが年齢を感じさせない熱血パワフル、そして受刑者への愛も感じられる素敵な役どころを、
2人の演技のおかげで見応えある作品に仕上がっています。
このプログラムに参加した受刑者たちの再犯率は実に4%、画期的な効果を生んでいる。
クレジットと共に映し出される、彼等の実際の写真を見て涙が溢れた。
心に何かしらの闇を抱え、瞬間に自制が効かない人たちがいます。
だけど、彼らも人間、再生する権利があるのです。
『罪を憎んで人を憎まず』を心しなければと思った作品です。