MasaichiYaguchi

新喜劇王のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

新喜劇王(2019年製作の映画)
3.5
1999年の前作ではチャウ・シンチ―が主演、監督、脚本を手掛けたが、本作では現代的な要素を取り入れ、女性を主人公に据えて新たな物語を紡いでいる。
タイトルにあるように作品自体はコメディなのだが、エキストラをしている友人が何人かいることもあり、映画女優を夢見ながらも、台詞もなく顔も殆ど映らないエキストラにいつまでも甘んじているヒロイン、ユー・モンの姿を見ていると切なくて心を鷲掴みにされる。
前作は香港映画の舞台裏をパロディ化して笑わせてくれたが、本作では“異訳”「白雪姫」の撮影現場を中心に映画業界”あるあるネタ”で笑わせてくれる。
本作のモンは30歳を過ぎても夢を諦め切れず、役を得ようと映画のオーディションに受け続けるもはねられてエキストラをしているのだが、もちろんこれだけでは食べていけないのでアルバイトをして糊口を凌いでいる。
緊急事態宣言が全国的に解除されて都内の映画館も再開し始めているが、それでも撮影現場は未だ本格的に再開していないのではないかと思う。
芝居やミュージカル等の舞台興行は秋まで中止となっていて、舞台中心のキャストやスタッフは収入が断たれて大変だと思う。
本作のモンは女優として第一線に立つには年齢的に厳しい状況にあると思うが、この「白雪姫」の現場で、かつてのスター俳優で今では落ちぶれたマー・ホーと出会ったことにより双方共に運命を変えていく。
この作品には、エキストラや撮影現場スタッフをはじめとする映画に対する愛があり、30歳を過ぎても夢を追い続ける娘のモンに呆れながらも、陰ながら応援する親の愛もあって、映画の後半から終盤にかけては笑いよりも、その思いや優しさが胸に沁みてきて目頭が熱くなります。