リーアム兄さん

アスのリーアム兄さんのネタバレレビュー・内容・結末

アス(2019年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

増大するメキシコからの不法移民、彼らは奴隷のように低賃金で働き、相対的に人件費が高いトランプの支持層であるブルーカラー層の白人達は職を奪われたと叫ぶ。しかし職を奪われたのははたして白人だけだろうか。鎖で繋がれアフリカから連れてこられた黒人達はかつて大農園奴隷労働者、庭師、ハウスキーパーとして働いていた。植木ばさみを持った自分と同じ姿に襲われる、まるで現役で庭仕事をするメキシコ人に居場所を奪われるかのように。ムーンライトでは黒人の肌をブルーで美しく表現していたのに対し、アスではハニー色に黒人を染め上げるライティングが目だつ。まるで黒人がメキシコ人に置き換えられているアメリカを象徴するかのように・・多重人格モノ、ドッペルゲンガーモノには必ずといっていいほどイングマルベルイマンの仮面ペルソナが引用される。今回も蜘蛛や双子の姉妹が序盤で登場。メキシコとアメリカの国境は簡単に超えられる構造になっており、まるで人間が手を繋いで作った即席な国境のように簡単に突破できるものである。この作品は人口が増加し続け、大統領選挙でも無視できない存在にあるヒスパニック系に対する恐怖を黒人目線で描いているように感じた。勝手に家に押し入り、ゴルフクラブで奴らに殴りかかる、ハネケのファニーゲームを主人公たちが逆にやっていて面白かったw ゲットアウトでは黒人のルーツを招かれざる客ベースにブラックユーモアに仕上げたコメディとして描いていたジョーダンピール。今回は現在のメキシコ系に侵食されているアメリカ事情を描いていた。顔のただれたフレディのエルム街の悪夢であって欲しい、だがしかし夢ではない、現実世界なのである。アメリカはもうダメだメキシコに行こうと意味深なセリフが心に残る映画であった。