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アスのneroのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.5
ジョーダン・ピール監督の第2弾とあってかなり期待値は高かった。前作「ゲット・アウト」ではクラシックの名作「招かれざる客」をひねったとも言われるようだが、今回は「盗まれた町」かな? ドッペルゲンガーホラーと侵略テーマSFを合わせたような肌触り。不条理系の怖さをじんわりと感じさせつつ、生理的ではない、存在を侵食される恐怖の描写には、ホラー苦手な自分でもそそられた。

ネタバレしないで書くのは難しい。恐怖の対象である”ヤツら”の規模がどんどん拡散していくためもあってか、ストーリーやオチには前作ほどのキレは感じられなかった。
もともと設定命の緻密な作風というよりは発想とイキオイで見せるタイプの監督のように思うが、さすがに地下空間に別社会が・・・だけじゃあ観客を納得させるには無理があると思う。空間の描写はなかなか良かったんだがねえ。

あの手をつなぐマークには見覚えがあった。調べると実際の”Hands Across America"というイベントは、1986年"We Are the Wolrd"からつながるアフリカ救済ムーブメントのひとつとして行われ、650万人が参加して北米大陸東西を手で繋いだという。絆を強調したそのコンセプトにはちょっと気味の悪さを感じたことを覚えている。
さらに、神の裁きの予告らしい”エレミヤ書11章11節”っていうのが何の暗喩なのか、素養が足りずどうにもわからない。本作のタイトルUsも、観客である”自分たち”と”United States”にかけているのだろうか、モヤモヤが残る。
彼方まで連なっていく”ヤツら”の姿はビジュアル的にもう少し強調してほしかったとも思うが、ラスト、”ヤツら”の壁の向こう側の世界には想像したくもない不気味さが感じられて良かった。

恐怖から開放されるカタルシスは味わえなかったが、前作でも終盤で観られたヴァイオレンス表現は、今回たっぷりとエスカレートした形で見せてくれる。その理性のタガが外れたヒステリックさはタランティーノ風でもあり、笑いまでも誘う描写が多い。今作の見どころはむしろこちらかも。

末っ子が楽しい。ほぼ全キャスト二役という、ギャラはどーなるんだ映画。