みおこし

アスのみおこしのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.7
ジョーダン・ピール監督の大ヒット作ホラー。『ゲット・アウト』は色々笑えるシーンも多かったけれど、本作はより恐怖描写が多くてよりショッキングでした…。

1986年、少女アデレードは両親とサンタクルーズの遊園地を訪れ、思いがけずミラーハウスに入ると自分にそっくりな少女と出会った。彼女はそのショックのあまり失声症になってしまう。月日は流れ、大人になった成アデレードは病気も克服し、夫と2人の子供に恵まれていたが、かつてのサンタクルーズを家族で訪れることになり…。

これは一度鑑賞しただけでは到底理解できない深すぎるテーマ…。前知識なしで見ると、終始漂うおどろおどろしい雰囲気が気味悪いだけで、予告編でもおなじみの自分たちと全く同じ顔をした"us(私たち)”が何を意味しているのかが良く分からず、正直何か特別な感想は抱きませんでした。
しかし、色々な記事やレビューを見てようやく気づきを得ると、本当の恐怖に気づかされます…。

1986年に、ホームレスや飢餓に苦しむ貧しい人たちを救うべく、太平洋までアメリカを横断して一列に人々が手を繋いだチャリティ・イベント“Hands Across America”が行われたそうなのですが、こちらは約600万人を動員して何とか行ったものの、3,400万ドル集まった寄付金が経費等で差し引かれて結局1,500万ドルしかチャリティに充てられなかったとのこと。
これは決してアメリカに限ったことではなく世界中で起きているといっても過言ではないと思うのですが、一見すると誰かを救うための施策のはずが、結局それは表面的なもので、ただ自分たちの行動を美化するだけで終わってしまうチャリティはいくつも存在します。そういった人々の”偽善”に警鐘を鳴らしている映画なのかなと…。
主人公のアデレードたちの目の前に現れた人々は、自分とは瓜二つなのにどこから見ても異形のもの。映画を観ながら、私たちはこの異形のものたちに底知れぬ恐怖を感じ、目をそむけたくなります。しかし、その嫌悪感こそ、”見たいものだけを見ようとする”ご都合主義の表れであり、まさに現実にはびこる社会問題。この異形の”us"こそ、恵まれた人々が冷徹に無視し続けてきたゆえの産物として映画では描かれているように個人的には感じました。
怒涛の展開の後のエンディングでは、とあるどんでん返しがあります。そこである人物の本性を知った時、本当に怖い存在は醜く許しがたい赤服の”us"ではなく、紛れもない私たちなのでは…、なんて色々考えさせられてしまいました。

それにしてもルピタ・ニョンゴ、本当にきれいな女優さん…。鬼気迫る熱演が本作でも光っていました!