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バースデー・ワンダーランドのKUBOのレビュー・感想・評価

3.6
3月6本目の試写会は、大好きな原恵一監督の最新作「バースデー・ワンダーランド」ジャパン・プレミア。

上映前の舞台挨拶には原恵一監督の他に、松岡茉優さん、杏さん、市村正親さん、東山奈央さんが登壇。松岡茉優さんが一瞬でカラフルな衣装に早変わりしたり、市村正親さんが親父ギャグで度々割って入って松岡茉優を怒らせたり、楽しいトークが続いた。原恵一監督は「映画っていうのは、見た後と前では何かが変わることがある。そんな映画ができたと思う。」と自信作であることを強調していた。

そのテーマは伝わった。物事に後ろ向きになりそうな時に、ポジティブにしてくれる魔法の首飾り「前のめりの錨」。引っ込み思案だった主人公のアカネ(松岡茉優)は冒険の末に強く明るい女の子に変わっていく。

ただ、そのテーマを伝える映画そのものはどうだったろうか? 期待度マックスで見たファンとしては、表現力としてのトゲがとれて丸くなってしまった気がする。

自身の持てない女の子が突然「女神」と呼ばれ、地下室から異世界に入り込む。偉大な錬金術師、妖精のような錬金術師の弟子といっしょに冒険の旅に出る。「ナルニア国物語」のような典型的なファンタジーなのだ。悪くはない。悪くはないが、ありきたりだ。

今まで「オトナ帝国」「河童のクウ」「百日紅」とトンガリまくってきた原恵一としては、初めて純粋に子ども向きのアニメを作った感じだ。

大人向きにし過ぎて日本では評判がイマイチだった細田守の「未来のミライ」と方向性は真逆でも、牙が抜けた感じは似ているような気がする。稀代の映像作家たちも歳をとって丸くなりすぎたか?

ただ、期待が大きすぎただけで、そう悪いわけではない。実は最後の最後までうじうじしてる主人公よりも、アカネの若いおばさんチイ(杏)のキャラが最高! 杏のキャスティングは原監督たっての希望だったそうで、当て書きで書かれた脚本は実におもしろい! アカネたちが旅をする色とりどりの異世界も美しく独創的だ。

それでも大ファンとしては及第点のアニメで満足はしない。常に驚きと予想の上をいく作品を届けてくれてきた原恵一監督。今回は子ども向けだ。こういうのを挟んでもいい。次はまた見たことない作品、期待してるよ!



*厳しいレヴューを書いたが、「やってみれば世界は変わる」という本作のテーマには共感する。私も一時、誘われても断り、機会があっても踏み出せない時期があった。だが「どうせダメかも」という考え方をやめ、ダメ元でも挑戦するようになって、アカデミー賞の会員になり、東京国際映画祭の審査員にもなり、次々と人生が拓けていった。私にもどこかの時点で「前のめりの錨」が首にかかったのだろうな。