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バースデー・ワンダーランドのsomaddesignのレビュー・感想・評価

3.0
大っきなスクリーンでこそ見るべき超美麗ワンダーランド。
世界観に没入したい。

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誕生日の前の日。小学生の少女アカネの前に、大錬金術師ヒポクラテスとその弟子ピポが現れる。彼らの世界を救うため、無理やり連れて行かれたのは、豊かな自然と不思議な動物で溢れるカラフルなワンダーランドだった。
柏葉幸子の児童文学「地下室からのふしぎな旅」を「クレヨンしんちゃんオトナ帝国の逆襲」「あっぱれ戦国大合戦」「百日紅 Miss HOKUSAI」の原恵一監督が、色彩豊かに映像化したファンタジーアニメーション。

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楽しみにしていた原恵一監督最新作。
「カラフル」「百日紅」と度々原恵一作品で組んで傑作を残してきた脚本:丸尾みほのコンビで自ずと期待値があがる。

原作未読。
イリヤ・クブシノブによるキャラデザインは超美麗で、イラスト画が動き回ってるみたいで新鮮。あまりに綺麗なせいか、予備知識ゼロで見たせいか、最初主人公が小学生に見えなくて混乱した。部屋の隅にあるランドセルや学習机が、いつまでも子供っぽさが抜けきれないままの高校生くらいかと思ったよ。

思春期の入り口にいる女の子が主人公の貴種流離譚。テンポよく非日常の異世界に連れてかれてしまって、めくるめく冒険と超カラフルな世界観がとても面白かった!
どことなく宮沢賢治の世界観に似てて、アニメ「銀河鉄道の夜」オマージュだったり、チャップリンの「モダンタイムス」モチーフな機械化された世界もあったり、自然風景から街の営みまで細部に渡る描きこみがすごい。


が、しかしオッサンな自分にはどうも説教臭く感じてしまって鼻じらむ。

最初の一歩の恐怖感や、つい後ろ向きになってしまう自分に打ち勝って、自分で人生を切り開く大切さを説く物語だと思うけど、その結果王子は自分の運命に従わざるを得ないわけで、決められた天命からは逃げられないって話でもあるような。それはそれで他人に犠牲を強いて世界を成り立たせる、残酷な話でもあるように思えてしまった。

大錬金術師ヒポクラテスが実はあんまり活躍しなくて(万能すぎるせいか途中から物語から強制退場させられちゃう)、総じて大人キャラが役立たず。大魔導士カマドウマに至っては、クライマックスで「なんでそんなイジワルめいた事すんのよ⁉︎」と問い詰めたくなる奇行ぶり。
(大人が大人の振る舞いをしない、子供に運命や旧習を強いるのもどうかと思うし、仮にホントに❌❌して王子がいなくなった場合、その先の世界の維持はどうするんだろうか?)


主役あかね演じる松岡茉優を始め、若い叔母のチィ演じた杏。声優さんたちの演出も素晴らしく、デフォルメが小さいキャラデザインもあってかすごく実在感があった。
同じ日に代替わりした「くれよんしんちゃん」を見たばかりだったので、先代しんちゃんこと矢島晶子さんの声が違う形で聞けたのが嬉しかった。

ひとつひとつのクオリティはすごく高くて、見るもの聞くもの全部楽しげなのに、なぜだか感情移入できなかった。子供向け作品で、自分がターゲット外なんだから、そりゃそうんだろうけども。

大型GWで話題作が勢揃いしてるせいか、工業的に目下大爆死中らしく、封切り翌日に見に行ったものの空き気味でした。話題作はどうせしばらくロングランするので、劇場で見られるうちに大きなスクリーンで見られる内に見るべき!

39本目
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