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家族ゲームのHKのレビュー・感想・評価

家族ゲーム(1983年製作の映画)
4.5
森田芳光監督特集第6作目。

本間洋平の原作小説を映画化。

角川がよくやるメディアミックスのような戦法ではなく、森田監督がたまたま出会って映画化したいと思い、映画にした作品らしい。実際作品の出来は素晴らしい。

それまで遊戯シリーズなどでハードボイルドな役柄をずっと演じていた松田優作にとって、この頃はイメチェンしようと思っていた時期だった。だからこそ家庭教師などという役を演じたのだろう。あんな強面の家庭教師がうちに来たらしょんべん漏らすでしょうね僕なら。

これまで「の・ようなもの」やその間の映画では当時のポップな音楽を取り入れた映画を主に撮っていたのに対し、この映画では自主製作時代に原点回帰したのかそのような音楽を一切使わず、飲み物をストローで飲む音、食べ物をくちゃくちゃ食べる音、シャーペンで何か書く音など生活音を基調にした映画のつくりをしている。後々の黒い家や模倣犯の雰囲気はここから出していたのね。

中でも伊丹十三演じるお父さんの目玉焼きをチューチュー吸うシーンは、いい意味でも悪い意味でも気持ち悪い。トークショーでこれやってたの森田監督だったらしいね。流石変な趣味持っている人だな。

茂之くんは完全に今の自分にシンクロしている部分があり、ある種恥ずかしくなった。この映画に出ている人たちは、の・ようなもののようにどこかぶっ飛んでいるが、明るいものではなく、暗く陰湿なものを見事に描いているのが妙であった。

虐めのシーンなども俯瞰撮影で劇場で見ると却って怖く見える。

そして、所々入る遊びのシーン。玩具なども特徴的であった。ホッケーゲーム、カードゲーム、ビー玉を転がすなんか変わった玩具などいろいろとあった。玩具には興味がないがいろいろと当時の玩具などを知ることができて良かったと思う。

そして、この映画の一番の見どころともいえる最後の晩餐。横並びのテーブルから次第にカオスになっていく光景は、どこか初期ダウンタウンのコントをにおわせる。松本人志もああいう感じの笑いの映画出せばよかったのに。

本当に爆笑してしまったwww、松田優作の真面目な顔してケチャップぶちまけるシーンぐらいから笑いが止まらなかった。

そしてそのまま去っていき、映画もどこかヘリが外を飛んで終末感を漂わせながら終わる。余韻はホラー映画であり、不気味なラストであった。

かなり面白い映画であった。流石の森田演出であった。
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