Iri17

家族ゲームのIri17のネタバレレビュー・内容・結末

家族ゲーム(1983年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

これはすごい。21世紀という時代を予期しているかのような作品だった。当時の社会を反映しているのかもしれないが、今の日本は確実にこの道を進んでいる。

横並びに並んで食事をする家族。彼らは向き合わないし、お互いのことを何も知らない。伊丹十三が目玉焼きの黄身をチュパチュパ吸うという癖にも気付かないし、息子の気持ちもまるで理解できてない。まさに家族ゲームを演じているだけなのだ。
学校ではひたすらに受験戦争を煽られ、まさに戦場に駆り出される。弟はその意味を問うが誰も答えてはくれない。これは今の日本も変わらない。勉強しなさい、いい大学に入りなさい、いい会社に入りなさいと大人は言い、多くの子供がそれに従う。その理由は誰も意識していないが、そういうもんだからと付き従う。まさに戦争の論理である。もちろん大人も子供も多くの人が何となく理解はしている。高収入と社会的地位とステータスを手に入れるためだ。しかしこれは本質的な幸福とは直結していない。そこまでは多くの人が考えない。
しかし兄弟だけはなんとなく気付いているのだ。こんな受験戦争に何の意味があるのかと。こんなもの終わりなきゲームに過ぎないではないかと。
社会も家族も全ては欺瞞であるということに気付いている兄弟は目を瞑る。母親はまだそのことに気付かない。しかし次の戦場(大学受験→就活→家族ゲーム)へと運ぶヘリコプターの音は着々と近づいてきているのだ…。

父親がラストシーンで現れないのは家族ゲームの崩壊を意味するのではないか。ヒビだらけの家族にとどめを刺したのは松田優作演じる家庭教師だが、彼が何をしようが崩壊は止まらなかっただろう。
現在の日本はこの虚構による社会=家族の崩壊を止められるのだろうか…。
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