ナガエ

盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~のナガエのレビュー・感想・評価

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これは面白い映画だったなぁ!
最初から最後まで、メチャクチャよく出来てた!
インド映画なんだけど、突然踊ったりしないから、そういう意味でも良かった。

とりあえず内容から。
アーカーシュは、白杖をつき、サングラスを掛け、周りの人の手助けを得つつ、腕の良いピアニストとして暮らしている。個人的にレッスンに行くなどして、レッスン料をもらっているのだ。ちょっと前にこの町へやってきて、NGOが与えてくれた障害者用の住居に住む彼のことを周囲も理解していて、周りともうまくやっている。
しかし実は彼、本当は目が見えるのだ!目を白濁したように見せるためにコンタクトレンズを入れ、他人の視線がないところでは周囲をちゃんと見て行動している。
ある日、若い女性が乗ったスクーターがアーカーシュのところへと突っ込んできた。怪我こそ無かったがお詫びをしたいという彼女と喫茶店に行き、話をすることに。ピアニストをしているというと、父親が経営するレストランのピアノで演奏することになった。彼の演奏は大好評で、初日からチップの最高記録を更新するほどだった。彼女はアーカーシュに徐々に惹かれ、二人は良い仲になっていく。
その店のお客さんで、かつて大人気を博したプラモード・シンハという俳優がいた。彼はアーカーシュに、結婚記念日に妻を驚かせたいから、サプライズで家にピアノを弾きにきてほしいと依頼する。
当日。プラモードの家を尋ねるアーカーシュだったが、ドアから出てきたのは奥さんのシミー。夫は出かけていると言って、アーカーシュを家に招き入れたが、彼が弾くピアノ越しに、なんとプラモードの死体が!もちろんアーカーシュは”気づく”わけにはいかない。トイレを借りると、なんとそこに、恐らくプラモードを殺したのだろう男の姿が。何も気づかないフリでピアノを引き続ける彼は、やっとプラモードの家から出て、そのまま警察署に足を運ぶのだが…。
というような話です。

とにかく、ストーリーがメチャクチャ良く出来てる。冒頭の、「ん?なんだこれ?」というシーンから、最後物語が閉じるまで、ホントに展開が予想できないし、普通に考えれば無茶苦茶な展開のはずなのに、それを納得させるだけの状況設定・世界観・登場人物をきちんと配している。「目が見えないはずの主人公が殺人事件を目撃してしまう」という風に、ひと言で映画の面白さを伝えられる絶妙な設定でありながら、そこからどう話が転がっていくのかまったく想像がつかないという展開の妙があって、非常に良く出来てるなと感じた。

主人公は、何度か絶体絶命のピンチを迎えるんだけど、それを、そんな風に脱するか!というような形で乗り越えていく。何を書いてもネタバレになりそうだからほとんど何も書けないんだけど、「手術」のシーンは、もう無理だろうなぁ、と思ったなぁ。まさかあれを、あんな感じで切り抜けることになるとは、予想外すぎた。




最後の最後も、「あぁ、きっとああなっちゃうんだろうなぁ」と思わせておいての、「なるほどそうきたか!」っていう感じが見事だったし、最後の見せ方も、「話せば長い」っていうアーカーシュのセリフから、なるほどこの映画はそこで語られたことなのね、というのが分かって納得感がある。

しかしやっぱり、この映画の白眉は、これも具体的には書けないんだけど、シミーがアーカーシュの家に来てあぁなっちゃった、っていう展開なんだよなぁ。まさかアーカーシュがあんなことになっちゃうなんて!というのが、この映画最大の凄さっていうか、面白さっていうかで、そこでアーカーシュは一旦最強の絶望を味わうわけなんだけど、そこからの大大大逆転劇みたいなのが、見どころだよなぁ、と。

という感じで、具体的なことはほぼ書けないぐらい、「アーカーシュが死体を見つけちゃってからの展開」は、そりゃあもう色んなことになります。「見えないはずなのに見えちゃってる」っていう、ある種ワンアイデアで突破しよう的な映画っぽくありつつも、一方で、絶妙な着地点を用意して、そこに至るまでの展開をしっかりと描き出していくという、まったくワンアイデアで逃げようとしてないところが素晴らしいと思いました。

具体的なことをほとんど書いてないんで、よく分からないでしょうけど、是非見てみてください。
ナガエ

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