tetsu

花々のtetsuのレビュー・感想・評価

花々(2018年製作の映画)
3.5
今年もフランス映画のお祭り"マイフレンチフィルムフェスティバル"が開催!!ということで、もちろん鑑賞!!

季節は万世節。
シングルマザーである主人公は強引に息子を連れて、父のお墓参りに向かうが、彼女は"花"にこだわっていて...。

「なんだこれ、ただのキチガイ母さんの被害を受ける可哀想な息子の話じゃねぇか...。」というのが、最初の印象。笑

しかし、それにしても『花々』(原題『Des Fleurs』)というタイトルって、何だか不自然じゃないか?
なぜ、複数形なんだ?
と疑問に思い、色々と調べてみると、
この作品、実は中々深い作品だったのかもしれません...。

と、ここで少し余談ですが、
この物語の舞台となるのは万世節。
元々はカトリック教の祭日で全ての聖人をお祝いする日と言われています。
正しくは死者を忍ぶ「死者の日」は翌日なんですが、大抵、万世節のみが休日になることから、この日にお墓参りをする人が多い模様。
ちなみに万世節は11月1日、前日に行われるハロウィンは、この前夜祭なんだとか。

話は戻りまして、
なぜ、本作が「花々」だったのか?
それは本作に登場する重要な"花"が2つだったからでしょう。
僕自身、1回目はあまりにも流し見をしていて気がつかなかったのですがw、この作品、最初お母さんが探しているのは"赤のゼラニウム"でしたが、終盤で探していたのは"赤のバラ"でした。

最初"亡きお父さんにお供えをするため"に探していた花は、最後には"息子の彼女にあげるため"に変わっていましたね...。

そこで、それぞれの花には何らかの意味があるのでは?と西洋での花言葉を調べてみると、

赤のゼラニウムには、
protection(保護)

赤のバラには、
I love you(あなたを愛しています)、love (愛情)

という意味がありました。

つまり、この物語、
母の成長を花の違いで表していたのではないのでしょうか?

夫を失い、愛する者が息子だけになってしまった母。
そんな母はどうしても「子供は私が守らない」といけないという焦りや執着に苛まれ、行き過ぎた愛ゆえに"過保護"へと走ってしまいます。
それに加えて、子供はというと完全なる反抗期、しかも彼女までいる。
そんな彼の姿に母は少なからず、嫉妬を覚えたのかもしれません...。
しかし、そんな彼がいなくなって、やっと反省したお母さんは息子の彼女へとバラを探しに行く。そこには息子に対する本当の"愛情"があったのではないでしょうか。

とはいえ、花屋さんへ強硬突破し、花をかっさらおうとする母。笑
しかし、そこで彼女が見せる涙からは、
不器用にしか生きられない自身の苦悩が垣間見え、簡単に変えられないそんな自分の性格に葛藤していたのかもしれません。

本作のラストシーン、殻に籠っていた彼女は最後に扉を開ける。
これは実はとても大きな一歩だったとも考えられます。
ストーリーに関して、ほとんど内容がないと言える本作。
しかし、その心情の変化にはとてつもなく大きな"母の成長"があったのかもしれませんね...。

参考
秋:万聖節とカボチャ (1) 万聖節と墓参り
http://www.bourgognissimo.com/Bourgogne/1ARTL/BR_044_1.htm
(万聖節の説明については、ココのサイトを参考にしました。)

西洋・英語の花言葉一覧(色別の花言葉も!) | 花言葉-由来
http://hananokotoba.com/hanakotoba-ichiran-eigo/#s
(花言葉はコチラのサイトから引用。日本と西洋で微妙に意味って変わってくるんですね...。)

『花々』予告編
https://youtu.be/vyScGne9Hgg
(YouTubeの映画祭公式チャンネルより)
tetsu

tetsu