廃線になった線路、取り残され錆びついた車両、古びたパイプが伸びる工場、雨水が溜まった広大な砂場、まるで世界は2人の少年を無限に遊ばせるために大人を消し去ってしまったかのように静まり返っている。
誰に咎められることもなく、2人は競い合い次々と未知の遊び場へ迷いこんでゆく。
ほんの好奇心、ほんの悪戯心、しかし、足を踏み入れた先は底なしの泥濘だった。
少年が事の重大さに気づいた時には手遅れになり、無知と無垢と無謀がゆえの戯れは決して消えることのない罪悪感と悲哀を残して彼の胸の中にだけ残された光景となる。
最後に行き合った狐の瞳は少年を見つめ去ってゆく。
泥の中に消えた友達は、狐を見たと言っていた。それは友達が狐の姿を借りて別れを告げに来たかのように思えたのか、少年は嗚咽さえ漏らさず静かに泣いた。
短い物語の中に凝縮された無常感が美しかったです。ロケーションの趣きも独特で、映像も綺麗な作品でした。