TAK44マグナム

コレクションのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

コレクション(2018年製作の映画)
3.7
myFFF2019短編作品。

ナチス占領下のパリ、画商のジャンスはユダヤ人収集家の美術コレクションを足元をみた低い金額で買いあさっていた。
大量のコレクションを秘蔵すると噂のクライン氏の元へ訪れると、娘のエリーズが何故か必死に追い返そうとする。
しかし、クラインはジャンスに自慢のコレクションを見せるのであった。


これは切なく、悲しい話。
なにより、コレクターという人種、そしてそれを糧に生きている者を短い時間の中でうまく描いていると思います。
盲目になりながらも、だからこそある意味幸せでいられるクライン。
商売のために心を鬼にしているジャンスでさえ、それを瞬時に理解するんですね。
だからこそのラストの台詞。

エリーズ役の女優さんがとても上手。
また、ティーカップの蓋を開けながらも手をつけないなど、細かい振る舞いで人物の立ち位置や心情を伝えるなど、無駄な台詞を廃しているのも良いです。
それもあって、重厚な映像もより映えます。


「目に見えないコレクション」という原作小説があるようで、本作を観てから検索してみたのですが、どうやら設定が微妙に違いますね。
原作は、盲目になったコレクターが幸せなのか不幸なのかを考えて複雑な心境になる画商を描き、それが第一次大戦後のドイツの状況とリンクしている内容らしいのですが、本作は時代背景がオチそのものに色濃く影響を与えています。


他の方のレビューを読ませて頂くと、長編で観たい方がたくさんいらっしゃるようですが、個人的にはこれは短編で完成されているのではと思いました。
無駄を削ぎ落とし、切れ味を重視した短編でこそ輝くオチではないでしょうか。
ただ、この時代背景で、この画商を主人公にした作品なら観てみたいとも思ったので、例えばオープニングで使われれば、画商がどんな人間なのかが良く分かる秀逸な出だしとして語られるかもしれませんね。
そういった意味で、長編から切り取った一部分みたいという意見には非常に共感させて頂きました。


青山シアター(myFFF2019オンライン上映)にて