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宮本から君へのmatsukawaのレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2019年製作の映画)
5.0
この顛末、当たり前の感覚からしたら完全にアウト。
レイプシーンがとにかく徹底的に胸糞悪くて、観ている誰もが拓馬に殺意を抱くはずなのに、(ひどい目に遭うとは言え)最終的に笑える結末に回収されてしまうのだから、普通の映画だったら噴飯物です。
でも、宮本という男と靖子という女は、人間のクズに対する社会的制裁になんて1ミリも興味がなく、それどころか身内の介入も絶対に許さず、あくまで自分という人間と他人という人間の一対一の取っ組み合いという道しか選ばない。
拓馬が笑える存在になって(作劇的には)許されてしまうあの瞬間、宮本と靖子にとってこのレイプ犯は石ころ同然の無価値な存在になっているわけで、石ころが生きようが死のうが関係なく、許すも許さないもない。
震えるほどの怒りや不快感を乗り越えて、この清々しさに突き抜ける感動。
「正しさ」とも「配慮」とも無縁な“青春”映画の傑作。
こんな奇跡はフィクションにしか起こせません。

真利子哲也なので当然、暴力描写の「痛さ」も格闘シーンのリアルな「面白さ」も相変わらず凄い。
非常階段シーンのアクション振付けの面白さ、あらゆるシーンでの拓馬の暴力の不快さ表現等々。

池松・蒼井の名演に負けず劣らず、一ノ瀬ワタルの悪役っぷりが本当に素晴らしくてあっぱれです。
ピエール瀧&佐藤二朗コンビも地味に最高。
テレビ版よりも更に池松壮亮の愛らしさが強調されてて、そこら辺も最高でした。
主人公が終始「前歯三本抜けっぱなしでフガフガ言ってる映画」というの人類史上初じゃないですか。

ぶっちぎりで今年のベストワン。
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