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宮本から君へのeyeのレビュー・感想・評価

宮本から君へ(2019年製作の映画)
3.9
宮本から君へ(2019)

2019年 ひたすら映画を観続けた年の最後がこの映画でホントに良かった

あらゆる意味で素晴らしかった

同じような手法を用いてる映画を知らないし
ましてや ここまで役者魂を見せつけられるなんて、、

しかも 変化球無しのド直球で感情ぶつけられるとは、、、とにかく全てが本気

熱量の高さと有無言わせない圧力にやられた

常にトップギア 真っ直ぐで ひ弱だけど
負けん気が強い 池松 壮亮 氏 演じる宮本

彼の生き様こそオンリーワンを表してて
とにかく宮本の熱量でストーリーを作ってる

蒼井優 演じる 靖子も靖子で不器用な反面めちゃくちゃ強い意志を持ってる

お互いにバカみたいに真っ直ぐ

誰かに左右されないし とにかく自分を信じてる

お互いに不器用だけど 全く窮屈そうには見えない

全身全霊で情熱的 人を傷つけて自分も傷つく

不器用さの裏の真摯な姿勢こそ
「これこそ人間のコミュニケーションでしょ!」と言わんばかり

宮本に特化するなら登場人物達とも感情をぶつけ合いながらも絶対に何があっても折れない心と感情

これぞ正に体当たり

信じた行動に命をかけて立ち向かいひたすら猛進する

エゴと傲慢の塊の中で突っ走った宮本は
とにかく鬱陶しがられ靖子に嫌われる

激情型でひたすら暴れ回るやり方だけど
表面的で簡単な暴力を肯定するんじゃなくて

"目には目を 歯には歯を"

ゆずれない態度と精神が描かれてる

靖子が受けた痛みを絶対に拓馬にやり返す

どちらかといえば
自分のプライドを傷つけられたかもしれない

そのエゴイズムを徹底的に追求した結果

その曲げない姿があるからこそ
最終的に靖子も心を打たれる

基本は宮本の独りよがりなんだけど
その姿勢を丁寧に だけど 大胆に描く

このさじ加減は言葉にすれば簡単だけど
実際に芝居で調整することはホント難しい

ヘタしたらシラけちゃうことになりかねない

でも他人の価値観なんかクソ食らえ
倫理観・美意識もクソ食らえ

その精神の中で観てる側へは息する間も無くひたすらアクセルを踏み込み続けるエネルギーを見せつけてくる

ストーリー終盤には自分も映画にあまりにも入り込みすぎて宮本が暴れ回る感情に付いていくことに精一杯だった

結果的に もはや 疲れ果てて ジェットコースターに乗り終わった気分だった

>生きてるヤツはみんな強えんだ

ラストに語られる宮本のこのセリフと表情には今まで積み重ねた肩の荷を下ろすカタルシスのような安堵感と安心感があった

痛み・泣き・叫び・笑い ひたすら傲慢に走り回った ありのままの姿に心を打たれないわけない

原作者の新井英樹氏が舞台挨拶で語った

>自分のこととして観てほしい。自分がこの人の立場だったらどうだろう?という見方だと、宮本、靖子、裕二、それぞれのキャラの際立ち方が見えてくると思います

観終わった今 この言葉の意味を噛みしめてる

宮本の存在が鬱陶しいって表現されるけど
その存在は圧倒的でありつつ 命がけ

宮本は現実を直視しつづけたことで
未来への可能性も含めて執念を燃やしてる

感情のぶつけ合いを経て汚い部分も綺麗な部分も全部引っくるめて自分を捉えて味のある人間味をさらけ出していく

このストーリーはフィクションだけど

『宮本から君へ』

そのタイトル通り宮本から確実に

「大切な何かがある」

ってことを「君へ」訴えかける映画
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