JAM

劇場版 仮面ライダージオウ Over QuartzerのJAMのレビュー・感想・評価

5.0
平成の時代を駆け抜けた平成ライダーの最終回の名に相応しい映画でしたね...前半のTVシリーズの地続きのような信長パートからの怒涛の後半が超気持ちいい。前半の『歴史では美しいとされているが、本当の今はもっと不恰好で必死だった」ってのがちゃんと後半生きてくるのがいいな。
いいんですよ。
終盤のソウゴの『俺達は瞬間瞬間を必死に生きてきたんだ!それを滅茶苦茶だなんて言うな!』って啖呵が凄い刺さって、もう爆笑しながら泣いてしまった。制作側の凹凸だらけの道程さえ肯定して物語に組み込んで成立させるコンテンツなんてそうそうないですよ。20年間、様々な評価を下されながらも続けてきた物語だからこそ出来たこと。
また本作の根底にあるのは様々な物に対する歴史の肯定であり、極めてミクロな個人の人生への讃歌でもあって好きなんだ。あと私はとてもじゃないけど真っ直ぐな生き方をしてきたとは言えない側の人間なので、純粋に嬉しかったってのもあるんだよな。ひたすらに我武者羅で泥臭く、けして綺麗ではない傷だらけの身体だけれどそんな傷さえも誇りとし、必死に誰かの為に謳い続けられたそんな物語だからこそ愛してきたんだ、と。
だから有終の美なんて突っぱねて、
『うるせぇ!これが俺たちなんだ!』
と高らかに宣言しながら一つの時代に終止符打つの最高なんですよね。
不揃いな歴史達の救済と祝福、これを良しとしなきゃ私じゃない。

整合性の鬼とも言えるMCUが『エンドゲーム』を繰り出した後公開されるのをわかった上で、これを作ったんだろうなぁと思うと途端に嬉しくなる。
サノスの指パッチンに対しての返歌としてお出しするのが『平成生まれの人や物だけが空に吸い込まれて消滅するゲート』とか唯一性の塊かよ、って感じだし、話だって平成の私物化も甚だしい。
仮面ライダーが平成に乗っかった構図のはずなのに、まるで自分達の為に平成という時代があったとでも言わんばかりなのがいいな。元号は誰の持ち物ではないから我が物顔で使うのはアリなんだ。

語り部であるウォズの役回りも滅茶苦茶美味しくて好きなんだよな。予言の書に記された未来の王であるソウゴを祝福し続けた彼が、× × × を× × × して今を生きる常磐ソウゴという一個人を祝福する瞬間、ウォズというキャラクターはこれ以上なく完成して、不揃いだけれど愛すべき物語の一部として成立するのがエモい。そもそもメタ有りの美味しい立場なんだけど、今回で凄い好きになってしまったよ。

話の道中は『俺は気づかぬ内にヤクでも決めたんじゃないか』と錯覚するほどの内容なんだけど、テーマと本筋が明確かつ堂々たる物だからこそとっ散らかってるとは感じなかったんですよね。サプライズゲスト枠の彼が出てくる所とか、一見すればネタなんだけど要はアレ 『誰にも認められず報われなかった偽物が認められていた偽物を叱咤激励して奮起させる』シーンなわけで、その構図が今回の話に合ってるもんだから帰宅道中でみっともなく泣いちゃうっていう。冷静になって考えてみると、この映画 考察点や上手くまとめたよなって部分が結構あるのもこの二十年の歴史を現すようでいい。

不揃いや逸脱を肯定し『それが俺達だ』とこちらを見ながらそう力強く宣言してくれたこの映画を私は愛しましょう。
祝え!
この平成を駆け抜けた者達の堂々たる讃歌の物語を!
JAM

JAM