Kaeru

おかあさんの被爆ピアノのKaeruのレビュー・感想・評価

おかあさんの被爆ピアノ(2020年製作の映画)
3.0
地元広島にて先行公開だったので、観てきました。
平日昼間の上映、軽く40人くらい入っていました。やはり年配の方が多かったです。

戦後75年目の夏、率直な感想としては、原爆の話を現代劇に合わせるのはだいぶ難しくなってきたかなと。
正直、映画としてのクオリティはあまり高いものではなかった。

被ばく2世である主人公の母親が、大学生の娘に、故郷広島のことを話したくない、娘を広島に近づけたくないという序盤の内容。

映画では被ばく者の娘ということで、難しい人生だったと母親は示唆していましたが、差別されたとか具体的になにがあったかなど語られていません。ただ、広島で生まれ、上京してから親になった人は、子供に広島の原爆のことをわざわざ話して聞かせるだろうかと疑問になりました。

75年はとても長い。

日本は平和だし、生活に追われていたら、なかなかそういうことを思い出したり、考えたりしない。
生まれも育ちも広島の、わたしでもそうです。
やはり真夏のこの時期にならないと思い出さない。

この映画の役割は、そういう忘れかけている人へのメッセージと、戦争も原爆もまったく知らない世代へ伝えて聞かせることでしょう。
全体的に優しいトーンで作られており、警鐘/継承というよりは、鎮魂歌(レクイエム)という印象を受けます。

映画としてのクオリティは高くない、と言いましたが、素人っぽい役者が出てきてこれはいるのかというシーンがあったり、色々メッセージがあってどれかひとつに絞ったほうがいいかなと思った。

佐野史郎さんの広島弁はナチュラルでびっくりしました。広島弁というとだいたい「仁義なき戦い」や「孤狼の血」のおどりゃあすどりゃあな感じですが、あれは正確には呉弁で、じっさいの広島弁はもっと丸いです。
武藤十夢ちゃんの演技は微妙でしたが、ただアイドルだけあってスクリーン映えする美人でしたね。出演者には不満がないです。

これははじめての感覚でしたが、大きなスクリーン全体に歩いたことがある場所、見たことがある場所が映ると、何とも言えない感動が沸き上がりました。
それだけでも観てよかったと心底思います。

帰りしなに、エレベーターに便乗した老夫婦が、“映った場所を歩いて帰ろう”と話していました。
本当に映画っていいものですね。