じぇれ

たちあがる女のじぇれのレビュー・感想・評価

たちあがる女(2018年製作の映画)
3.8
【母として生きるか 自然のために死ぬか お前が決めろ】

美しい平原。女は狙いを定めると撃ち放つ。送電線が火花を散らして引き裂かれる。
そんなエコテロリストの女性に、里親になる話が舞い込む。
環境保護と母親、2つの夢で揺れる彼女の決断は?

思っていた作品とは全く違いました。序盤は牧歌的な生活を描いていくのかと思っていましたが、先述の通り、テロ活動から始まり...もう”たちあがってる女”じゃないの!

原題”WOMAN AT WAR”の通り、彼女はたった独りで戦場にいるんです。人間として自然を守らなければいけないという責任感ゆえに。しかし、女性として母親になりたいという想いが叶いそうになり、葛藤していくんですね。でも既に”たちあがってる女”は、引き下がるわけにはいかない状況に追い込まれ......。このような心の揺れを描いているため、見応えのあるヒューマンサスペンスに仕上がっています。

それでいて、ランボーを彷彿とさせるテロ活動シーンがあったり、劇伴に合わせて演奏者・歌唱者がスクリーンに現れる奇抜な演出があったりと、一筋縄ではいかない曲者ぶり。実に不思議な味わいです。

また、この作品の肝は、ヒロインを完全無欠の正義の人として描いていないこと。独善が生み出す負の影響にも言及してあるため、鑑賞後考えさせられます。特にラストカットは、みんなで語り合いたい。きっと十人十色の感想が聞けるのではないでしょうか。

というわけで、少々不思議ちゃん的な映画なのですが、気になった方には是非ご覧いただきたいと思います。

※上映前、ジェンダーに関するトークイベントがありました。たしかに、本編でもジェンダー問題を少しは匂わせていますが、女性の自立がメインテーマになっているような作品ではありません。そちら方面の期待は、あまりなさらないように。
じぇれ

じぇれ