KnightsofOdessa

たちあがる女のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

たちあがる女(2018年製作の映画)
4.0
[ラストシーンだけでも観る価値あり] 80点

地雷続きだった劇場鑑賞作品の中では比較的当たりの方だと思う。トランスフォーマーはどうにかしてアイスランド産"ほのぼのヒューマンコメディ"っぽく見せようとして、せっせとポスター造りをしたようだが、その実単身で弓矢を構えて社会に喧嘩を売る環境テロリストを巡るブラックコメディである。最小限の設定と最小限の登場人物を最大限活用することで"たちあがった"一人の女の肖像を映し出すことに成功している。常に逮捕される"薄汚い"外国人バックパッカーや双子の姉の挿話を丁寧に回収しつつ、ウクライナの少女の話までしっかり活用していて"映画的には"好印象が残る。ラストの指し示す"道なき道"は立ち上がっても救えなかった世界の暗示であると共に、これからの世界をも含意するエゲツないくらい素晴らしいシーンだった。

ただ、環境を破壊するから未来の子どもたちのためにとアルミニウム精製工場の電力供給を停止することに対して"自分がやっていることは絶対に正しい"とする点には大いに疑問が残るし、終始モヤモヤしていた。それこそ劇中で"原始時代に戻れってことかよ"と言及されているのに、それに対する解答は用意されていない。最終的には移民問題や異邦人問題に帰着しているため、論点がブレているような気がしてならない。

それでも全体的な満足度は高めで、あの超現実的な楽隊の演奏シーンは何回観ても笑えた。いい映画なんじゃないすかね。
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