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それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.0
【やなせたかし生誕100周年!今度の相手は使徒ばいきんまんだ!】
TOHOシネマズフリーパスを使い、朝からアンパンマンを。受付のお姉さんにスカした顔で「アンパンマンを一つ貰えるかな?」と言い、観てきました。

昨今、SNSでは「アンパンチ」が暴力的だと論争を呼んでいる。実際のところ、アンパンチに不安を抱く親の心理は『ペット2』が懇切丁寧に語っている。ドライに言えば赤の他人である赤子。しかしながら、男と女の交わりによって産み落とされた存在に自分の身体の一部を感じるようになる。赤子は不安定だ、右も左も分からず予測不能な行動をする。赤子は巨人や鉄の塊、有害物質に恐れを為すことなく猪突猛進我が道を行く。親は、初めて気付く危険な香りに不安を抱き、万全のリスク回避を試みるが、赤子はいとも簡単に裏切ってみせる。その不安のスパイラルによる叫びの矛先がたまたまアンパンマンに向いただけに過ぎないのだ。別にアンパンチがなくとも、ドゥクシとか別のパンチが親を苦しめるのは明白だが、不安の渦中において盲目になってしまうのです。

閑話休題、アンパンチ擁護派のみなさん、本作には理想のアンパンマンはいません。荒れ狂うバイキンマンに制止の一声はなく、人々の声援と共に出会い頭のアンパンチをする映画であります。

ただ、本作は昨年の作品同様、高度で大人なテーマを散りばめた良作であることには変わりありません。

アイスの国はいわば石油産出国や資源国に見える。国土を覆うアイスを掘り起こすことで豊かな国を維持していたのだが、資源が枯渇し、死に行く土地の姫となったバニラ姫が主役だ。

彼女は執事の期待により、魔法のスプーンを使いこなすよう努力するが、期待の重圧に負け、自分探しの旅に出る。アイスのことは忘れたいのに、望郷の幻影が彼女に纏わりつく。そんな彼女がコキンちゃんとの対話、アンパンマンの背中をみて再び姫凱旋するまでの軌跡が描かれる。

才能のある者は努力を努力だと思わない事実に対する絶望を如何に克己するか?ばいきんまんというキャラクターから紡ぎだされるブラック企業経営者や欲の肥大化による他国侵略描写は大人が観るとビターだ。

本作は、児童向け寓話ということもあり、枯渇した国土運営に対する解が御都合主義な極みではあるのだが、そういったリアリズムは鼠帝国に任せておけばよい。

ATフィールドを使いこなす使徒ばいきんまんとアンパンファミリーの白熱した死闘込みで安定クオリティの作品と言えよう。