NAO141

無垢なる証人のNAO141のレビュー・感想・評価

無垢なる証人(2019年製作の映画)
4.2
良い作品だった!沁みる!!
本作は弁護士と証人の心の交流を描いている。弁護士スノを演じるのはチョン・ウソン。『私の頭の中の消しゴム』という作品で有名である。『ザ・キング』という作品では権力を振りかざす検事を演じていたが、今回は真逆の弁護士という役柄。証人の少女ジウを演じるのは天才子役と謳われたキム・ヒャンギ。自閉症の高校生という難しい役柄を熱演している。その演技力は圧巻である!

長い間自分の信念を貫き通して仕事をしてきたスノ弁護士だったが、父親と暮らす生活も苦しく、大手の弁護士事務所と契約。しかし、その事務所は利益優先で弱者を排除する。弁護士という職業柄、訴訟に勝つには良心を貫いてばかりはいられない。しかし自身の信念と違うことをすることに悩み、苦しむことにもなるスノ。本作では〈誠実であることの難しさ〉〈良い人であり続けることの難しさ〉というものも描かれている。〈誠実〉〈良い人〉であり続けることは難しい。しかし〈人として大切なこと〉は何かという点も描かれていることが本作のポイントである。最終的にスノがしていることは弁護士という仕事としては失格な部分もあるが、しかし弁護士である前に〈一人の人間〉であり〈自身の持つ信念〉に従って行動する姿には感動する。
少女ジウの「あなたは良い人ですか?」という言葉に「良い人になれるよう努力するよ」と返すスノが良い。

考えさせられるシーンも多い。
スノの「自閉症さえなかったら」という呟きに「自閉症じゃなかったらジウではありません」と返す母や、ジウが支援学校を「普通のふりをしなくて良いから楽しい」と言うシーンは〈普通とは何だろう〉〈障害とは何だろう〉ということを強く印象付けられるセリフである。
スノの父親がスノへ宛てた手紙の内容も考えさせられる。〈良い人〉は社会の中では時に損をすることもある。スノの父親も友人の保証人になったために借金を背負わされている。その事で生活が苦しいことも事実。しかしそれでも彼は友人を裏切らなかったことで結果的に自身が救われているのである、〈一人の人間〉として良心に従った結果だからだ。この父親の影響も受け、スノは法廷で弁護士でありながら最後は〈一人の人間〉として良心に従って行動する。非常に心の温まる作品だった。

本作は自閉症についても学ぶことが出来る。自閉症は実は障害ではなく生物としての人類のバリエーション(変異)の一つと言われる。〈障害〉と一括りにしてしまうのは我々が我々の視点で彼らを見ているからであり、我々が偏見や誤解をするのは〈無知〉だからである。普通と違うことが人より劣っていることにはならない。いや、そもそも〈普通〉とは何なのか。人は誰一人として同じ人はおらず、人それぞれに〈個性〉〈特徴〉〈能力〉がある。本作は多くの気づきを与えてくれると共に、観終わった後に清々しい気持ちにもなれる良い作品である。
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