ワンコ

母との約束、250通の手紙のワンコのネタバレレビュー・内容・結末

母との約束、250通の手紙(2017年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

最後の言葉
ヨーロッパに散り散りになっていたユダヤ人は、ドイツでだけ迫害、差別されていたわけではない。

相対的に高い教養や、彼らが肩寄せ合う姿、執念にも似た努力に、多くのヨーロッパ人は、何か恐怖のようなものを感じていたのかもしれない。

母親の狂気にも似たロマンを鼓舞する言葉の端々には文豪の小説についての事柄が盛り込まれる。

そして、流浪にも似た母国を後にする姿、ユダヤ人のオープンとは言えない集まり、正教(おそらくロシア正教)との一線を感じさせる場面、母国の一員として闘っているにもかかわらず差別されるストーリーには、迫害の苛烈さを感じてしまう。

そして、母親の執念は、死しても尚、その手紙がロマンを生に引き戻し、目標に向かって背中を押し続ける。

このロマンの一生を、波乱の生涯と呼ぶのか、数奇な運命と捉えるのか。

母親の死を知っても、ロマンは外交官になり、作家活動を続け名声を勝ち取り、家庭を持ち、子供にも恵まれた。

母親の執念の結果なのか、ロマン自身には母親の希望を叶えようとする使命感があったのか、それとも、この二人は実は、二人でひとりなのか、自分のイマジネーションをかき乱す。

そして、
自殺の前、ロマンは、出版社の担当者に宛てた手紙に「大いに楽しんだ」という言葉を添えてたそうだ。

迫害、死地を巡り、それらを乗り越え、妻を自殺で亡くして、何が見えたのだろうか。
壮絶さのみならず、僕の想像を超えすぎている。
ワンコ

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